研究課題/領域番号 |
19J01341
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
中村 彰伸 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター 創成研究領域, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 局在性リガンド / 細胞周期 / シグナル制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞周期制御因子を任意のタイミングで急速に活性化/不活性化するための汎用的な化合物ツールの開発を目指す。さらに本技術を用いることで、細胞周期制御因子がどれくらい細胞周期進行に寄与するかを定量的に明らかにすることを目指す。 当該年度は、細胞周期のモデル生物として知られる、分裂酵母で細胞周期関連因子に摂動を与えるための小分子化合物ツールの開発と評価を行った。本年度は、昨年度開発した、小分子化合物mDcTMPにより大腸菌由来ジヒドロ葉酸還元酵素(eDHFR)融合タンパク質を細胞質から細胞膜へ移行誘導する化合物ツールを、eDHFRのタンパク質工学的改変とmDcTMPの分子構造の改良により、分裂酵母用に最適化することに成功した。開発した上記のシステムは、分裂酵母および哺乳類細胞で、さまざまなシグナル分子の細胞内局在を急速に細胞膜に移行誘導できることを示すことができている。本研究成果の哺乳類細胞における応用は、プレプリントとしてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度は、分裂酵母内で細胞周期関連因子に摂動を与えるための小分子化合物の開発に取り組んだ。分裂酵母にeDHFRに緑色蛍光タンパク質であるmNeonGreenを連結した融合タンパク(eDHFR-mNG)を発現させ、そこにmDcTMPを添加することでeDHFR-mNGの細胞膜局在化を誘導できるかを評価した。しかし、大きく2つの問題があることが明らかとなった。①mDcTMP添加後、eDHFRの殆どは、細胞膜ではなくエンドメンブレンに局在化してしまう。 ②mDcTMPが分裂酵母のプロテアーゼにより分解されることで、持続的なeDHFRの局在移行を達成することができない。本年度は、これら2つの問題の解決に努めた。 ①細胞膜は、(phosphatidylserineやphosphatidylinositideといった)アニオン性のリン脂質が局在する領域であることに着目し、mDcTMP-eDHFRシステムの細胞膜特異性の改善を試みた。種々の検討の結果、eDHFRのリガンド結合部位に隣接するループ領域にポリリジンを挿入したeDHFRiK6を新たに開発し、mDcTMP添加で分裂酵母内のeDHFRiK6を細胞膜特異性に局在移行誘導することに成功した。また、このeDHFRiK6を哺乳類培養細胞で用いることで、さまざまなシグナルの人工活性化に成功した。哺乳類培養細胞への応用については、先行してプレプリントとして発表した。 ②mDcTMPの分子設計を見直し、分裂酵母のプロテアーゼに対する分解耐性を大きく向上させることに成功した。分裂酵母内でeDHFRiK6の細胞膜局在化を長時間(12時間以上)持続させることに成功した。 これらの結果から、当該年度は期待以上の研究の進展があったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、分裂酵母や哺乳類細胞の細胞周期関連因子にeDHFRiK6融合蛋白質の細胞内局在の急速操作による細胞周期制御を目指す。
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