微生物型ロドプシンは、光を受容することでイオン輸送やセンサーとして働く機能が知られている。この光受容は、内部に結合したレチナール色素が担うことから、ロドプシンの機能発揮には必須の分子と考えられる。近年のゲノム解析技術の発展に伴い、ロドプシンを持ちながら、このレチナールを生産するための既知の遺伝子を持たない微生物が多く知られるようになってきた。これらの微生物は、自身でレチナールを生産するのか、あるいは周辺環境から受け取るのかは不明であった。そこで本研究では、そのような細菌を用い、ロドプシンが機能するのか、レチナール生産が可能なのかを明らかにすると共に、生態系における、ロドプシンとそれを取り巻くレチナールの獲得戦略について明らかにすることを目的とした。 その結果、ロドプシンの活性およびレチナールを検出することができ、未知のレチナール生産経路によってレチナール生産をしている可能性が示された。しかし、自身で生産できるレチナール量は細胞内のロドプシン量と比べて少ないことも明らかとなり、環境中から取り込むという可能性も残されている。これらの結果は学術誌 Microbes & Environmentsに掲載済みである。 さらにロドプシンを有する細菌・古細菌内で、どの程度既知のレチナール生産経路が存在するのかを解析したところ、平均で約3割のゲノム中には既知の遺伝子は存在しなかった。前年度に特定のグループではほぼ全てのゲノム中に既知のレチナール生産経路が存在しないことを明らかにしており、これまでとは全く異なる色素の獲得戦略を取る可能性が示された。本年度は、レチナールの前駆体となるカロテノイドの代謝遺伝子の有無を大規模なゲノムデータベースに登録されているゲノムを用いて解析を行うとともに、ロドプシンやそれら色素代謝関連遺伝子を環境ゲノム中から探索、存在量推定を行なった。これらは現在投稿準備中である。
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