常同行動とはある一定の行動が著しく増加する行動であり、ADHD、自閉症および統合失調症という現代を代表する精神疾患に共通して生じる異常行動である。脳内モノアミンが関与していることが示唆されてきたが、これまでの研究からモノアミンのみでは説明がつかない可能性がある。 また、GRIN1 遺伝子の変異が生じることと自閉症の子供にみられる常同行動との関連性が示されている。GRIN1とはNMDA受容体の活性に関わる遺伝子であり、アミノ酸が受容体に結合することで活性化される。このことから常同行動が栄養素によりコントロールできないかと考えた。しかしながら、常同行動に関わる神経については不明な点が多く、詳細な発症メカニズムは未解明である。そこで本研究では、薬物により脳内神経伝達物質をコントロールするのではなく、普段から摂取可能な栄養因子による常同行動の制御が可能な経路の新規探索を目指すことを目的とした。これにより予防も可能となることから、常同行動が発現してからではなく、発現前から早期に QOL を改善することが期待される。 常同行動のモデルマウスについても確立されておらず、当該年度においてはまずモデルマウスの作出から行う必要があった。ストレスを与えて常同行動を発現させる方法に着目し、2系統のマウスにストレスを負荷させることで常同行動を発現させる群を設定した。一方で、遺伝的な要因についての検討も必要でありNMDA受容体の働きが低下しているマウスを用いて行動パターンの評価を行った。行動パターンの評価については当研究室に備わっている3次元深度センサを用いて検討を進めた。この装置は立体的な動きを捉えることができる。遺伝的要因のモデルマウスは導入時から常同行動が確認された。1年間ではあったものの、ストレス負荷をかけた環境的要因により常同行動発現のモデルマウスとして有用である系統が決定された。
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