研究課題/領域番号 |
19J01421
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
後藤 真実 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | ペルシャ湾 / 湾岸アラブ諸国 / イラン / 物質文化 / 服装 / 女性 / エスノグラフィー / ジェンダー |
研究実績の概要 |
採用1年目の本年度は、湾岸アラブ諸国側での臨地調査を軸として、イラン系移民の女性の衣服を介したアイデンティティ表象の様相を、インタビューや参与観察によってデータとして収集することを第1の目的とした。まず研究・成果報告であるが、一般書の分担執筆は日本語で2本が採録され、英語1本も投稿済みである。口頭発表に関しては、博士論文の研究結果を中心に、国内で3箇所、国外では精華大学で開催された地域研究大会や、米国での中東学会年次大会での研究発表を実施し、今まであまり関わりがなかった地域の研究者と意見交換ができた。また、臨地調査であるが、以下の要領で6か国において文献収集、インタビューや参与観察を実施した。7月から8月にかけて、英国のエクセター大学のアラブ・イスラーム研究所に名誉研究員として在籍し、湾岸諸国に関する書籍の文献調査を中心に、研究所に所属する研究者との意見交換を日常的に行った。9月から10月にかけては、バーレーンとサウジアラビアに渡航し、湾岸地域に伝わる仮面文化の追加調査を実施するとともに、イラン系移民の人々にもインタビューを行った。11月から3月半ばにかけて断続的に行ったアラブ首長国連邦での臨地調査では、ザイード大学に客員研究員として在籍しながらの文献調査や、イラン系家族の住居に滞在しながら、イラン系移民の服装に関する研究のインタビュー対象者を募ることに重点を置き、調査を進めた。12月には短期間ではあるが、インドのムンバイに1社だけ残っている仮面生地工場を訪れ、生地の製造の歴史や工程を記録した。1月から3月上旬にかけては、断続的にオマーンのマスカットやソハールを中心に、イラン系家族を含むオマーン人家族の住居に滞在しながら、参与観察や現地の女性へのインタビューを実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、海外6ヵ国における文献資料の調査や収集、及び臨地調査の実施、そして博士論文の研究成果を中心に国内外での積極的な研究発表のなど、2月まではおおむね順調に研究を進展させることができた。しかしながら、ニューヨーク大学上海校、インドネシア科学院、カタル大学での国際シンポジウムやワークショップ、アラブ首長国連邦のザイード大学とUAE大学、東京外国語大学での研究発表は新型コロナウイルスの影響で延期もしくは中止になってしまったため、来年度内に情勢が落ち着くのを待って、発表を実施したい。また、アラブ首長国連邦とオマーンにおける臨地調査においても、新型コロナウイルスの影響で、多くの予定していたインタビューができなくなってしまったため、来年度以降に実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
採用2年目となる来年度前期は、博士論文と本年度の成果を元に英語の市販書刊行のための執筆活動に重点を置く。同時に英語と日本語で1本ずつ論文を投稿する。また4月から6月まで東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所にて自身の博士課程の研究を元に、湾岸地域の仮面文化についての展示会を開催する予定であり、アウトリーチ活動の一環として綿密に準備を行い、実施する。後期は新型コロナウィルスや現地の情勢を見ながら、可能であればイランでの臨地調査を行う予定である。また、既に日本中東学会の年次大会やスペインで行われる予定のイラン研究大会(The 13th Biennial Iranian Studies Conference)での研究発表が決定しているが、通年を通して国内外での研究発表を積極的に行っていく。9月から12月にかけては、国立民族学博物館の特別展「ユニバーサル・ミュージアム―さわる!“触”の大博覧会」にて一部展示スペースを担当しているため、こちらにおいてもより多くの一般の方に研究成果を知ってもらえるよう準備を進め、実施する。
|