2019年度は、主にフィリピン共和国ルソン島北西部に分布するオーストロネシア語族のイロカノ語を対象に調査・研究を進めた。また収集した言語資料に基づき調査成果を報告した。 主な研究成果として国際学会を含め国内外の学会・研究会に置いて計6つの研究発表を行った。本年度は論文の公刊には至らなかったが、現在研究成果をまとめた一編の論文を投稿中である。学会等での発表については、7月に国際認知言語学会において、また10月に国立国語研究所とハワイ大学マノア校の共催で行われたワークショップにおいて、主要な研究課題であるイロカノ語の空間移動事象の描写に関する研究発表を行った。その他、イロカノ語の状態変化表現に関する発表を国内研究会において二度行った。状態変化事象と移動事象の表現は英語などにおいて平衡性が指摘されてきたが、イロカノ語においては言語的に異なる範疇化がされるということを明らかにした。 これらに加えて、本年度はこれまで全く研究蓄積のない新たな言語についての現地調査を行い、基本的な語彙や構文に加え、日常の畑仕事や先祖についての自然談話を収集した。これらのデータに基づき、当該言語の音素体系の記述を行い、国内研究会にて成果発表を行った。
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