研究課題/領域番号 |
19J01441
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
加藤 悠爾 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 珪藻 / 南大洋 / 微化石 |
研究実績の概要 |
研究航海での試料採取・試料の処理および分析:2019年3~5月にIODP Exp. 382 (国際深海科学掘削計画第382次研究航海) に乗船し,南大洋大西洋セクターにおいて堆積物コアを5地点で採取し,更新世の高解像度堆積物および鮮新世温暖期をカバーする良好な状態の堆積物試料が得られた.これらの試料については,2019年末に所属機関へ到着した.現在,顕微鏡観察用の試料処理および分析が進行中である.さらに,2019年12月~2020年1月に東京大学大気海洋研究所が所有する研究船「白鳳丸」による研究航海KH-19-6 Leg 4に乗船し,南大洋大西洋セクターの約10地点で堆積物コア試料を得た.自身が研究対象とする珪藻および黄金色藻シスト化石の産出も確認済みである.また,表層海水採取・濾過を約40地点で行った.
論文投稿:2019年7月に珪藻化石を用いた亜南極前線(南極周極流の北限)の復元について論文執筆・投稿を行った.査読を経て,修正原稿を2020年3月に再投稿した.
新規手法の習得:高知大学および海洋研究開発機構(高知コア研究所)のグループでは,珪藻化石の酸素同位体比測定法を開発しており,自身もその手法を習得した(2020年3月).南大洋では珪藻化石が多産するため,この手法は当時の水温あるいは塩分を復元する重要な手法となることが期待される.なお,本手法は申請時の研究計画には含まれていなかったが,これは本研究課題の遂行にも大きく寄与しうるものであるため,次年度以降の研究計画に組み込むこととする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,申請時点で予定していたIODP航海に加えて,受入研究者が主導する研究航海にも乗船する機会を得た.これらの航海においては,国際的に活躍する若手・中堅研究者で調査・観測に従事し,本研究計画の要となる試料を南大洋から採取することに成功した.また,受入研究者らが持つ地球化学的手法を習得したことで,本プロジェクトにおいても新たな切り口が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
・IODP Exp. 382で得られた堆積物試料の年代は予想よりも新しく,申請時点で研究計画に含めていた後期中新世については充分な試料が得られていないため,研究対象とする年代を中期鮮新世~更新世に変更する. ・本研究課題の柱のひとつである絶滅珪藻の古生態推定に関しては,鮮新世までをカバーする堆積物試料Site U1536を主な分析対象とする.既知の環境指標種と絶滅珪藻種との産出量変動パターンの比較などを行う. ・IODP Site U1538では更新世の高解像度堆積物が得られており,この試料に産出する珪藻化石を用いた海氷分布域変遷の復元を行う. ・本研究課題におけるもう一方の柱である黄金色藻シスト化石については,先述の白鳳丸航海で得られた堆積物・海水試料を用いた微古生物学的・地球化学的分析を行うこととする.これにより黄金色藻シストの存在量・生物地理分布・塩分などの環境パラメータとの関連などが解明される.また,共産する珪藻化石を対象にした酸素同位体比測定を行うことで,黄金色藻シストと融氷水の関係性を検証する(※一般に融氷水は軽い酸素同位体比を示す).2020年夏季に試料分取を行い,各種分析がスタートする予定である.
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