研究課題/領域番号 |
19J01450
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古川 恭平 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ポリアミン / DNAメチル化 / UHPLC |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、胎児期におけるポリアミンの生理的重要性をエピゲノム修飾という観点から解き明かすことである。我々は過去の研究において、妊娠期の高血圧モデルラット(SHRSP)に低タンパク質食を与えると、仔の食塩感受性高血圧を発症するリスクが高まること、さらにそれにはDNAメチル化が関与する可能性を明らかにしてきた。また、妊娠期の低タンパク質食がラット胎仔中ポリアミン濃度を低下させることを示し、胎仔中ポリアミン濃度の低下がDNAメチル化に影響を与えていると考えられた。そこで、本年度は、ポリアミン分析系の改善、DNAメチル化率の測定法の確立および細胞実験によるポリアミンのエピゲノム効果の検討を行った。 まず、ポリアミンのUHPLC解析系の確立を行った。従来の方法に比べ、短時間でシンプルな高感度分析系の樹立に成功した。本解析では、動物組織に豊富な3種のポリアミンに加え、植物等に含まれるポリアミンを含めた計8種のポリアミンの定量を可能とした。 つづいて、DNAのグローバルメチル化割合を評価するUHPLCの解析系を構築した。本測定では、従来のメチル化シチジンの定量に加え、必要DNA量は多いもののヒドロキシメチル化シチジンの割合も定量可能となった。 これら分析系を用いて、培養細胞において細胞内ポリアミンレベルがDNAメチル化に影響を与えるか否かを検証した。ヒト肝臓癌由来細胞であるHepG2細胞に対してポリアミン合成酵素(オルニチン脱炭酸酵素)の阻害剤(DFMO)を5mMで処理した。その結果、細胞内ポリアミン濃度(プトレシンおよびスペルミジン)は低下し、さらにグローバルDNAメチル化割合が僅かではあるが増加した。したがって、細胞内ポリアミン濃度がDNAメチル化に影響を与える可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、2つの高感度分析メソッドの確立とそれを用いた細胞実験を行った。今回確立したUHPLC分析系はいずれも本研究を円滑に進める必要不可欠なものであり、今後さらに研究が発展することが予想される。実際に、これら分析を用いて、ヒト肝臓癌由来細胞において、細胞内ポリアミン濃度とDNAメチル化の関係を明らかにし始めている。したがって、確実に本研究の目的の完遂に近づいていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、細胞内ポリアミン濃度がDNAメチル化に影響を与えることを示している。そこで、次年度の研究では、どのポリアミンがDNAメチル化に影響を与えているのか、ならびにどの遺伝子のメチル化状態が変化しているのかを明らかにする。具体的にはDFMO阻害剤に加え、各種ポリアミンを添加し、DNAメチル化の変化がキャンセルされるか否かを調べ、その際のポリアミン濃度も測定する。さらに、ポリアミン濃度によって影響を受けている遺伝子を網羅的解析により明らかにする。 また、このようなポリアミンとDNAメチル化の関係は他の細胞でも見られるのかを確認するため、ヒト腎細胞(293)を用いて、同様の実験を行う。
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