研究課題
本研究では,これまでに報告されている研究および予備実験の結果から,当初予定していた実験内容の修正を行った.低酸素ガス吸入を使用せずとも,運動時の大腿部への圧を調整することで,低酸素ガス吸入と同様の環境(組織酸素飽和度の低下)を作り出すことができることを確認した.したがって,血流制限下の運動を対象に研究を遂行した.本年度実施した研究では,若年男性10名を対象とした.事前に測定した最高酸素摂取量の40%強度にて,30分間の下肢自転車エルゴメータ運動を3条件にて実施した:①血流制限を行わない条件(CON条件),②および③動脈遮断圧の40%あるいは80%にて大腿基部に血流制限を行う条件(40%条件および80%条件).なお,動脈遮断圧は超音波診断装置を用いて,安静仰臥位時に大腿基部を漸増的に駆血した際,後脛骨動脈の血流速度が消失する圧を動脈遮断圧として定義した.運動中は心拍数と血圧を連続的に記録した.運動前後に上腕動脈における血流依存性血管拡張反応(FMD)を測定した.その結果,血流制限下の自転車運動により平均血圧は上昇し,その程度は80%条件が最も大きかった.FMDは運動後にいずれの条件においても低下したが,40%条件およびCON条件のFMDに差は認められなかった.一方,80%条件では他の2条件と比較して運動後に低値を示した.以上の結果から,有酸素性運動時における血流制限は,動脈遮断圧を基準として高圧を用いる場合,非活動肢における顕著な血管内皮機能の低下を誘発する一方で,低圧を用いる場合はその低下が軽減されることが明らかとなった.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Respiratory Physiology & Neurobiology
巻: 296 ページ: 103812~103812
10.1016/j.resp.2021.103812