本研究は、近代日本における農村の女子教育について検討することを通して、農村出身の未婚女性が置かれた社会的ありようを明らかにすることを目的としている。本研究では、(1)農家出身の未婚女性の学歴と家内領域における役割に関する研究、(2)農村の未婚女性への啓蒙活動と教育に関する研究、(3)繊維工場における女子労働者の教育機会に関する研究という3つの課題を設定し、2021年度は(1)と(2)についての成果発表を行うことができた。(1)に関しては、青年学校から新制高校分校職業課程家庭科への制度変更を経験した世代への聞き取り調査をもとに、農村女性の生活に根ざした裁縫教育への要求と新制高校卒という学歴取得の意義について検討した論稿が査読付学会誌である『村落社会研究ジャーナル』に掲載された。また、1950年代の新制高校分校家庭科における裁縫教育の内容と教育要求について検討した論稿が2022年6月発行予定の論文集に掲載される。(2)に関しては、戦前期に県農会により設置された女学校の生徒・卒業生の作文を題材に、農村の「模範処女」であることが期待された女性たちの規範意識と、文章表現における「少女文化」の影響について分析を行なった論稿が2022年3月発行の論文集に掲載された。(3)については、新型コロナウイルスの流行の影響で実施する予定だった調査が実施することができなかったこともあり、ほとんど研究を進めることができなかった。
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