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2020 年度 実績報告書

感情がワーキングメモリと視覚探索に与える影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19J01552
研究機関関西学院大学

研究代表者

真田 原行  関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2022-03-31
キーワード感情 / 認知 / 注意 / 事象関連脳電位
研究実績の概要

令和2年度は、まず平成31年度に行った、「感情状態が視覚探索場面の認知過程に与える影響」に関する事象関連脳電位(ERP)測定実験データを詳細に分析した。結果は、ネガティブな感情状態がニュートラル・ポジティブな場合に比べて、ターゲット刺激への注意を減弱させることを示した。感情状態が認知機能に与える影響の研究は少ないため、本研究内容は重要な意義を持つ。この成果について、令和3年度に国内学会に発表を予定しており、加えて国際学会での発表準備、論文化の準備も進行中である。
また令和2年度に予定していた「感情状態がワーキングメモリ処理に与える影響の解明」実験については、再度実験手続きを精緻化する必要が生じ、実施を見合わせた。そのため計画を一部変更し、本研究の基本的枠組みである「感情と認知の関係解明」に関連して、感情的内容を持つ逸脱刺激(写真)がどのように注意を捕捉するのか、またその注意捕捉は自動的なのかトップダウンな認知操作の影響を受けるのか検討すべく、ERP測定実験を行った。結果、ネガティブな内容の逸脱刺激はその他の内容より強く注意を捕捉し、その処理はトップダウンな認知操作の影響を大きく受けることを示唆した。また平成31年度実施した、感情的特徴を持つ音(協和音・不協和音)による注意捕捉の解明実験については、既に国際誌に投稿し、審査を受け修正投稿中である。まもなく受理されると見込まれる。また同枠組み内において、ユーモア感受における認知過程と感情の関係性を検討するERP測定実験も行い、その成果について国内・国際学会で発表した。この成果の論文原稿はほぼ完成しており、間もなく国際誌に投稿を予定している。本研究計画の大きな目的は、感情と注意やワーキングメモリなどの認知機能とどのように関係するか、生理心理学的手法を用いて検討することであり、これらの研究成果はこの目的達成に対して貢献しうる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和2年度は、平成31年度に行った感情状態が視覚探索処理に及ぼす影響の研究について、必要な分析を完了した。この成果については国内学会において発表を予定しており国際学会での発表も準備中である。
また「感情と認知の関係性」という本研究のテーマの大きな枠組みにおいて、平成31年度に実施した「感情的質感を持つ協和音と不協和音がどのように注意捕捉するか」に関する実験の成果を国際誌に投稿し、審査を受け修正投稿中である。
残念ながら令和2年度予定していた感情状態とワーキングメモリ処理に関する実験は、実験手続きを精緻化するため再度延期した。しかしながらその代替として、「感情と認知の関係解明」というテーマの中で以下の2つの実験を行い具体的な成果を得ている。
まず、ユーモア処理における認知と感情の解明を目的とした実験を行った。この実験は、日本の言葉遊びである「なぞかけ」がもつ構造的利点をうまく活用している点がユニークであり、ユーモア処理における不一致検出過程ではなく不一致解消過程が主観的面白さに関係するという結果を得た。この成果については既に国内・国際学会で発表済みであり、現在は論文原稿をほぼ完成し、近日中に国際誌に投稿予定である。加えて、感情的な内容を持つ写真刺激がどのように注意捕捉するか、またその注意捕捉は自動的なのか、トップダウンな認知操作の影響を受けるのかについて検討する目的で実験を行った。結果、ネガティブな内容の写真刺激はニュートラル・ポジティブな内容の写真に比べて強く注意捕捉し、かつそのプロセスはトップダウンな認知操作の影響を大きく受けることがわかった。
これらの内容を踏まえると、1年間としては十分な成果を得たと考えられ、本研究課題の進捗状況としては概ね順調と言える。

今後の研究の推進方策

令和3年度はオランダLeiden大学に1年間訪問し、Dr. Henk van Steenbergen氏と感情と認知の関係性に関する共同研究を行う予定であったが、昨今の新型コロナウイルス感染症流行のため特別研究員採用を一時中断し、その訪問を延期することとした。延期する期間は令和3年9月頃までを予定しているが、ヨーロッパの感染状況などによってさらなる延期の可能性も残る。
それまでの間、これまでに得た研究成果を公表するための準備を優先的に行う予定である。具体的には、まず「ユーモア処理における認知と感情の関係性」研究の論文原稿を国際誌に投稿し、次に、感情状態が視覚探索処理に及ぼす影響の研究、感情的内容を持つ逸脱刺激の注意捕捉とその処理に対するトップダウン認知操作の影響の研究、それぞれについて、国内・国際学会での発表と、論文化の準備を進める。
またこれまで実施を見送ってきた感情状態がワーキングメモリに及ぼす影響の研究についても、実験手続きが十分精緻化でき次第、実験を開始する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Not incongruity detection but its resolution determines subjective humor; An ERP study using Japanese nazokake puns2020

    • 著者名/発表者名
      Sanada, M. Kumagai, A., & Katayama, J.
    • 学会等名
      Society for Psychophysiological Research 60th Annual Meeting (SPR 2020)
    • 国際学会
  • [学会発表] 「なぞかけ」とERPを用いたユーモア感受過程の検討2020

    • 著者名/発表者名
      真田 原行, 熊谷 有紗, 片山 順一
    • 学会等名
      第38回日本生理心理学会大会

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公開日: 2021-12-27  

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