2021年度開始から2022年9月における延長期間終了まで、まず2020年度まで実験実施・データ分析を行ってきた「感情状態が視覚探索場面の認知過程に与える影響」に関する事象関連脳電位(ERP)研究について、論文の原稿の作成を進めた。感情が注意に及ぼす影響を検討した先行研究は複数あるが、視覚探索課題における標的刺激への注意を対象とした研究は本研究が初めてであり、先行研究とは異なる角度から当該問題にアプローチした内容と言え、感情による注意への影響の解明に寄与するものである。またこの研究内容について、国内学会(第39回日本生理心理学会大会)、国際学会(the 18th NVP winter conference on Brain and Cognition)においてポスター発表を行った。 本研究の基本的枠組みである「感情と認知の関係解明」に関連して実施した2つの研究「感情的特徴を持つ音(協和音・不協和音)による注意捕捉の解明実験」と「ユーモア感受における認知過程と感情の関係性を検討するERP測定実験」は、その成果が論文として国際学術誌に掲載された。 また同様に、「感情と認知の関係解明」に関連して実施した、反応バイアスによる逸脱刺激注意捕捉処理への影響を検討したERP研究は、その成果を国内学会(関西心理学会第132回大会)で発表した。また同様に実施した、感情的内容を持つ逸脱刺激(写真)による注意捕捉とその効果への課題負荷の影響を調べたERP研究について、その成果を国内学会(関西心理学会第133回大会)で発表した。 そして2021年度10月より約1年間オランダに滞在し、Leiden大学に所属する研究者との共同研究を行った。この共同研究は感情が認知制御に及ぼす影響の神経メカニズムの解明を目的としており、本研究の基本的枠組みに大きく貢献するものである。
|