研究課題/領域番号 |
19J01605
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
栗原 モモ 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高度被ばく医療センター 福島再生支援研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 原発事故 / 里山利用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、リター中のCs-137について存在形態別の生物利用性を明らかにし、実環境におけるリター~土壌表層のCs-137を存在形態別に評価することにより、林産物への正確な移行率の推定モデル構築を目指すことである。これにより、汚染地域における森林・里山利用の再開に向けた科学的根拠を得ることができる。初年度は、以下について調査を行った。(1)コナラの葉中のCs-137の化学形態の調査:森林内のCs-137の動態評価には、林床における固定態ではない移動しやすいCs-137に着目した動態調査が重要である。そこで、植物体内のCs-137の化学形態を調べるための溶出試験を行った。(2)旧避難指示区域における住民の林産物利用の実態調査:林産物等の利用再開に向け、震災前および現在の里山利用状況に関する調査を行った。(3)山菜のCs-137の移行割合評価:林産物利用の実態調査により、現在利用されている主な林産物は山菜であることが明らかになったため、山菜摂取を通じた内部被ばく線量の評価に向け、土壌から山菜の可食部へのCs-137の移行割合の算出を試みた。(4)リターの堆肥化に伴うCs-137の動態調査:震災前に行われていた主な林産物利用には、山菜の摂取以外にリターを利用した堆肥作成があることも明らかになった。そこで、リターを用いた堆肥利用の再開を目指し、リターの分解過程におけるCs-137の動態の解明と、その情報を利用した堆肥作成途中のCs-137を低減させる方法がないかを検討するための野外試験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究の進捗状況は以下の通りである。(1)コナラの葉中のCs-137の化学形態の調査:展葉前から落葉まで4回にわたり、福島でコナラの葉を枝ごと採取し、実験室内で葉の溶出試験を行った。 (2)旧避難指示区域における住民の林産物利用の実態調査: 震災前後の森林の利活用状況についてインタビュー調査を行った。帰還後の森林利活用の状況と、住民の属性の関係について、インタビュー調査の書き起こしを用いて解析した。(3)山菜のCs-137の移行割合評価:実際に野外で山菜と土壌、リターを採取し、放射能測定の結果から移行割合を求めるとともに、多くの種に対して大規模なデータを得るために公開データを使用することによる移行割合の算出を試みた。また、算出した移行割合を用いて山菜摂取による内部被ばく量の計算を試みた。 (4)リターの堆肥化に伴うCs-137の動態調査:地元住民と協力して従来のやり方で山林からリターを集めて堆肥づくりをおこなった。今年度は、リターの収集と、堆肥の仕込みを行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。(1)コナラの葉中のCs-137の化学形態の調査:現在、放射能測定がおおむね終了しており、結果のとりまとめに入っている。今後は、結果の解析と論文執筆に取り組む。(2)旧避難指示区域における住民の林産物利用の実態調査: 昨年度解析が終了したため、今後は論文化を進める。(3)山菜のCs-137の移行割合評価: 論文を執筆し、雑誌に投稿したものの、リジェクトされたため、現在受け入れ研究員の指導を受けながら原稿を修正中である。今後は論文の完成と、投稿を目指す。(4)リターの堆肥化に伴うCs-137の動態調査:実験の開始直後であるため、今後も引き続き野外試験を行う。
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