研究課題/領域番号 |
19J01614
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊角 彩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 子ども / 自殺 / 希死念慮 / ウェルビーイング / レジリエンス / 問題行動 / エコロジカルモデル |
研究実績の概要 |
本研究は、2015年度から東京都足立区で実施している悉皆調査「子どもの健康・生活実態調査」を用いて、小学生高学年の子どもの自殺リスク要因を縦断的に検討することを目的としている。エコロジカル・モデルに基づいて、リスク要因を家庭、学校、地域に関する要因に分け、それぞれがどのように子どもの希死念慮に影響を与えているかを明らかにする。具体的には、小学校4年生時点および6年生時点の①希死念慮を主要アウトカム、②自己肯定感、③幸福度、④コーピング、⑤抑うつ傾向を副次アウトカムとして、1)家庭の経済的状況、2)家族構成の変化、3)ネガティブな親子の関わり(虐待傾向を含む)、4)友人と地域とのつながり、5)いじめられた経験とポジティブな親子の関わりの交互作用との関連を調べる。 初年度である本年度は、2018年度に実施された追跡調査データ(小学校4年生時点)を用いて、小学校1年生から4年生までの虐待傾向が子どものウェルビーイング(レジリエンス、問題行動)にどのような影響を与えるかについて、縦断的に検討した。固定効果モデルを用いた分析の結果、虐待の頻度が増えることが、レジリエンスの減少および問題行動の増加と有意に関連していることが明らかになった。さらに、虐待が増えてもレジリエンスが高まる要因(保護因子)が何かを検討するため、分析を行った。その結果、学校でのソーシャル・キャピタル、ロールモデルとなる大人や挨拶をしてくれる大人の有無が保護因子となることが示された。 このように、本年度は、小学校1年生から4年生までの縦断データを用いて、家庭の要因(虐待傾向)に焦点に当て、それが子どものウェルビーイングにどのように影響を与えるか、そして、その影響が学校や地域の要因によって緩和するかどうかを調べ、重要な示唆を得ることができた。これらの研究結果に関して現在、英語論文を執筆しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に実施された追跡調査データ(小学校4年生時点)では、主要アウトカムである希死念慮やリスク要因であるいじめられた経験について尋ねることができなかったため、子どものウェルビーイングをアウトカムとして用いて、いじめられた経験以外のリスク要因について解析を行なったが、当初の計画通り、家庭・学校・地域の要因を縦断的に検討することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2018年度に実施された小学4年生時点の追跡調査データを用いて引き続き解析を行うともに、2020年度の「子どもの健康・生活実態調査」の調査票作成・調査実施にかかる足立区との調整作業・データクリーニングおよび分析を行う。小学1年生から4年生までの縦断データを用いた研究では、さらに経済的状況や家族構成の影響について検討するとともに、虐待傾向と自己肯定感や幸福度との関連についても検討する。また、2020年度の小学校6年生時点のデータを突合し、小学1年生から4年生までの研究結果と合わせて、小学校6年生までの影響について解析する。2019年度および2020年度に得られた研究成果について、学会発表および論文執筆・投稿を行う。 なお、主要アウトカムである希死念慮やリスク要因のひとつとしているいじめられた経験については2020年度の追跡調査で尋ねる予定であるが、万が一質問紙への追加が足立区によって認められない場合は、高知県など他の自治体で行われた調査データを用いて検討する。
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