2020年1月21日から2021年1月28日までの1年間、メリーランド大学ボルチモア郡校でGovind Rao教授のグループと共にCenter for Advanced Sensor Technologyにて経皮CO2の計測に関する研究を実施した。同グループではこれまで経皮放出速度に基づく経皮CO2計測システムを開発している。当初、このシステムと私がこれまで開発していた揮発性有機化合物(VOCs)用バイオセンサを組み合わせ、複数成分を同時計測する技術の開発を計画していたが、COVID-19が米国内でも流行し、計画通りに研究を進めることが困難な状況となった。Rao教授との相談の結果、COVID-19関連研究を進めた。具体的には、サージカルマスクやN95マスク、フェイスシールドを重ねて着用した状態での経皮CO2の動態を調べ、マスクが呼吸に影響を与える可能性があるかを調査した。結果として6人の被験者の内5人(試行数 32)において、運動時にマスクを着用した場合、マスク非着用時と比較して経皮CO2放出量の有意な増加が観察された。本成果は国際誌に投稿し、現在査読中となっている。 帰国後は、2019年度に得た「酵素を含有した電界紡糸繊維」を基に、最終目標である三次元空間中でのVOCsイメージングを実現するために必要不可欠な「三次元酵素マトリクス」を作製するため、電界紡糸法を用いて繊維が充填された三次元構造体の構築が可能か検討した。結果として立体型の電極を用いることで電界紡糸による三次元構造体の作製が可能で、構造全体の繊維密度について改善の必要があるものの、三次元イメージングに必要な酵素マトリクスの実現性を示すことができた。2020年度をもって特別研究員PDを辞退するが、本テーマには継続して取り組み、三次元ガス測定技術として、成果の結実につなげたい。
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