研究課題
代表者らはこれまでに、太陽光に含まれる紫外線や強度の強い可視光 (強光) によって障害を受けた葉緑体が、丸ごと液胞内へとオートファジー依存的に輸送・除去される「選択的クロロファジー」経路の存在を示した。本研究では、特に障害葉緑体を選び取って認識するレセプター機構に関わる遺伝子群を明らかにし、上記経路の分子レベルでの解明を進めるために、植物遺伝学のアプローチを用いる実験1 と、ケミカルバイオロジーを取り入れる実験2 (ケミカルスクリーニング) を行い、得られた結果に応じてクロロファジー特異的欠損変異株の原因遺伝子およびクロロファジー誘導抑制化合物の作用機序を解析する実験3を進めてきた。令和2年度は、実験1である、変異原処理を行ったモデル植物シロイヌナズナ個体群からのクロロファジー特異的抑制株の順遺伝学スクリーニングを完了した。そして得られた変異株の原因遺伝子の絞り込みを順次進めた。原因遺伝子である可能性が高いと判断した遺伝子については、蛍光タンパク質融合コンストラクトを作出、シロイヌナズナに導入することで、その細胞内局在評価を行った。またその機能解析を行うためのさらなる実験材料(T-DNA挿入変異株や、CRISPR/Cas9によるゲノム変種株)の作成を進めた。また実験2についても、クロロファジーを抑制する化合物のスクリーニングを行い、複数の候補化合物を得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
順遺伝学スクリーニングおよびケミカルスクリーニングは、一定数の植物体数、化合物数の評価を完了しており、実際にクロロファジーのみを欠損する変異株あるいは抑制する化合物をそれぞれ複数獲得することに成功した。また、得られた候補株、候補化合物の解析を随時進めており、本研究計画はおおむね順調に進行していると考えられる。
本計画はおおむね順調に進展しており、大きな計画変更は行わずにすすめていく。注意点としては、ケミカルスクリーニングにおいて想定よりも多くの候補化合物が得られたため、化合物の構造、作用機序を検討しながら、濃度依存活性試験やオートファゴソームマーカーであるATG8を可視化した系統を用いた解析を併せて行うことで、さらに絞り込みを行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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