本研究課題は、資源管理の行為主体であるコミュニティが所与のものではなく、再編、再構築の過程にあるとき、コミュニティによる自然資源管理はどのように組み直され得るのかを事例に沿って検証し、自然資源管理の再編とコミュニティの再編の関係を明らかにすること、ならびに地域社会の持続可能性と回復力形成の社会的諸条件についての知見を引き出すことを目的としている。本年度は宮城県石巻市北上地区ならびに沖縄県の複数集落での現地調査を行い、並行して各種文献や資史料の収集・精査を行った。その結果、北上地区では、高台移転完了に伴うコミュニティの再編過程において、震災以前に行われていた集落ごとの資源管理の再構築はほとんど進んでいないこと、また、コミュニティの再編は予想よりもゆるやかにかつ慎重に行われており、旧来のメンバーシップに関わる事項の扱いに関してはとくに慎重さが求められるものとして認識されていること、などの注目点が浮かび上がってきた。一方、移転地別の人口データ、漁業データ等の分析から、地区の主生業である地域漁業の再生がコミュニティの再生と深く連動していることも明らかになった。 調査地に共通して明らかになったことは、それぞれの地区における「コミュニティ」の重層性や多層性である。本年度の調査分析からは、輻輳するコミュニティが自然資源管理とどのように関連していくのか、また、社会的および文化的基盤が揺らぐなかで、そうした多様なあり方として存在するコミュニティが地域社会の持続性をどのように引き出していくのかが今後重要な論点になることが見出された。
|