研究課題/領域番号 |
19J01715
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
角谷 基文 専修大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | 社会的随伴性 / 自閉スペクトラム症 / 機能的MRI / 社会的報酬 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的相互作用へのモチベーション生成過程の神経メカニズムを機能的MRIを用いて解明することを目的としている。自他の随伴性に伴い嬉しさが発生するメカニズムの背後には、自分の行動に対する他者の反応を予測する過程が関与していると考えている。そしてASD者は、この過程の処理が異なるため、社会的相互作用に対するモチベーションの低い可能性がある。本研究では、これらの点に着目し、予測と結果の一致が自他の随伴性に伴う社会的報酬を生じさせる現象及びその神経基盤の解明、社会的報酬が社会的関わりへの意思へと転化されるメカニズムの解明を目指す。近年、神経科学の分野においてPredictive coding理論という予測と予測誤差の観点から脳機能全般を統一的に捉える枠組みが提唱されている。この理論の観点から、ASDの本質的な障害は予測と予測誤差処理の問題にあり、ASD者が示す社会的相互作用の障害や限定された反復する行動様式はこれらに起因すると考えられているが、まだ仮説段階であり実験的に検討した研究は少ない。本研究は、自他の随伴性に伴う予測と結果の一致性という観点から、計算論行動科学と神経科学的手法を用いて、ASD者の予測処理過程の問題解明を目指す。
本年度は、本申請計画の基盤となる計算論(強化学習)モデルを構築し、査読付論文に受理された(業績1)。このモデルでは、予測誤差が行動の結果に与える影響を検討している。また、計算論モデルの推定に関する意見論文も査読付論文に受理された(業績2)。さらに、機能的MRIを用いて、他者の反応が、次の自身の行動の調整に関与している可能性(業績3)及び、ASD者は弱い自他の随伴性から得る報酬の感覚が弱いことが示されました(業績4)。これらのことから、、順調に申請研究は進められていると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な研究の進度としては、申請計画を進める上で重要となるモチベーション生成過程に関する新しい計算論モデルを考案・構築した論文が査読付国際誌に受理された。そして、計算論モデルと精神疾患との関連を検討する上で、重要なパラメータ推定法についての意見論文も査読付国際誌に受理された。さらに、機能的MRIを用いて、他者の反応が、次の自身の行動の調整に関与している可能性を示した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度実施した行動実験の結果を詳細に解析し、計算論モデルとの関連を検討する。
|