研究課題/領域番号 |
19J01720
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成瀬 紘也 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / ALS / ストレス顆粒 |
研究実績の概要 |
ゲノム情報から直接創薬を目指すインフォマティクスの新手法を筋萎縮性側索硬化症 (ALS) に応用し,新規のALSの治療候補薬の発見を目指す研究に取り組んでいる.特にALSの病態との関連が報告されているストレス顆粒 (SG)とRNA結合蛋白質 (RBP) に着目してALS病因関連遺伝子を抽出し,in silicoスクリーニングにより,複数のALS病因関連遺伝子にdirect PPIで関連を認めた遺伝子に対応する候補薬剤を同定した.候補薬剤の適正濃度などの条件検討を進めるとともに,候補薬剤の効果確認のために培養細胞を用いてSGの形成増加を評価する実験系を確立した. さらに孤発性ALS (SALS) 症例および家族性ALS (FALS) 症例の収集を継続した.当科でのエクソーム解析を含む網羅的変異解析でも,日本人のFALSの約4割,SALSの大部分でALSの病原性変異が未同定であり,ALSの分子疫学の解明を進めた.KIF5A遺伝子のALSの病原性変異のhot spotに位置する変異として,2種のスプライス部位の変異を日本人のFALSの2例で初めて同定し,KIF5A遺伝子変異における表現型の拡大,および日本人のALSの病因におけるKIF5A遺伝子変異の寄与を示した.さらにNEK1遺伝子のLoF変異が,日本人のSALS群で健常対照者群より有意に多く観察され,欧米や中国の集団と同様に,日本人のSALSの病因におけるNEK1遺伝子のLoF変異の寄与が示唆された.さらに若年発症のALS症例において,SYNE1遺伝子の新規変異を含む複合ヘテロ接合性変異 (compound heterozygous mutation) を同定し,臨床病型も含めて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALSの病態との関連が報告されているストレス顆粒 (SG)とRNA結合蛋白質 (RBP) に着目してALS病因関連遺伝子を抽出し,in silicoスクリーニングにより,複数のALS病因関連遺伝子にdirect PPIで関連を認めた遺伝子に対応する候補薬剤を同定した.候補薬剤の適正濃度などの条件検討を進めるとともに,候補薬剤の効果確認のために培養細胞を用いてSGの形成増加を評価する実験系を確立した. さらに孤発性ALS (SALS) 症例および家族性ALS (FALS) 症例の収集を継続した.当科でのエクソーム解析を含む網羅的変異解析でも,日本人のFALSの約4割,SALSの大部分でALSの病原性変異が未同定であり,ALSの分子疫学の解明を進めた.KIF5A遺伝子のALSの病原性変異のhot spotに位置する変異として,2種のスプライス部位の変異を日本人のFALSの2例で初めて同定し,KIF5A遺伝子変異における表現型の拡大,および日本人のALSの病因におけるKIF5A遺伝子変異の寄与を示した.さらにNEK1遺伝子のLoF変異が,日本人のSALS群で健常対照者群より有意に多く観察され,欧米や中国の集団と同様に,日本人のSALSの病因におけるNEK1遺伝子のLoF変異の寄与が示唆された.さらに若年発症のALS症例において,SYNE1遺伝子の新規変異を含む複合ヘテロ接合性変異 (compound heterozygous mutation) を同定し,臨床病型も含めて報告した.
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今後の研究の推進方策 |
ALSの病態との関連が報告されているストレス顆粒 (SG)とRNA結合蛋白質 (RBP) に着目し,抽出したALS病因関連遺伝子に基づき,in silicoスクリーニング解析を継続して実施する.複数のALS病因関連遺伝子にdirect PPIで関連を認めた遺伝子に対応する候補薬剤について,適正濃度などの条件検討を進める.SGの形成増加を評価する実験系を候補薬剤の効果確認に用いる.ALSの病態とSGの形成増加との関連性の解明のため,エクソーム解析に基づく変異解析を実施する.SG形成に関与しALSの病態に関連すると考えられる疾患感受性候補遺伝子とそのレアバリアントを複数同定しており、ALS症例で同定された同バリアントについて,SGの形成増加に寄与するか,機能解析実験で検討する. 当科でのエクソーム解析を含む網羅的変異解析でも,日本人の家族性ALS (FALS) の約4割,孤発性ALS (SALS) の大部分でALSの病原性変異が未同定であった.さらに FALS症例およびSALS症例のDNA検体および臨床情報の収集を継続し,エクソーム解析などを用いて,ALSの分子疫学の解明を目指す.
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