本研究課題の目的は,熟練者の卓越した運動スキルをさらに高める最適なトレーニング法を開発することである.運動学習の基本原理として,①運動のゴールと知覚した運動結果のエラーを小さくするフィードバック誤差学習,②試行錯誤的に様々な運動を実行し(探索行動),報酬が大きな動作を学習する強化学習,③過去の運動や感覚を反復するように次の運動がバイアスを受ける使用依存性学習(教師なし学習の一種がある.本研究では,これら3つの学習原理に基づき熟練運動スキルをさらに高める最適なトレーニング法を同定する. 本年度は使用依存的学習の学習理論に基づくトレーニング法を開発し,その効果の検証を実施した.使用依存的学習とは,繰り返し実施された運動が学習されるという理論であり,受動的な体性感覚入力だけでも生じることが報告されている.本年度は手指用の外骨格ロボットを用いて課題曲(ショパンOp.10-2)の運指を繰り返し提示できるシステムを作成し,当該課題曲の演奏技能を上達できるか検証する実験を実施した.その結果,外骨格ロボットを用いた使用依存性学習理論に基づくトレーニングが熟練ピアニストの演奏技能を向上できることを示唆する結果が得られた.これらの結果をまとめた学術論文を現在,国際ジャーナルに投稿すべく準備を進めている.また,前年度までに実施した実験に関して,結果をまとめた学術論文を執筆したため,現在国際ジャーナルへ投稿中である.
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