研究課題
前年度までに、Al-Cu系合金にて固溶量を11.5%に増大でき、固溶強化と析出強化により最大で206 HVに高強度化できることを示した。今年度は、高圧ねじり(HPT)加工を用いた結晶粒微細化により、さらなる高強度化を試みた。HPT加工は、直径2 mmの試料においてもひずみを効果的に導入するため、リング状の真鍮材料に試料を埋め込んだ状態で実施した。これにより、10回転の加工で最大30の相当ひずみを導入可能となった。その結果、硬さは試料外周部で227 HVとなり、結晶粒微細化により大幅な強度向上が達成できた。かつ相当ひずみ10以上の導入で、定常状態となることが明らかとなった。その後80℃で時効を行うことで、硬さはさらに向上し最大で235 HVとなった。これらはいずれもAl-4%Cu材にHPT加工を施した際の強度を上回っており、固溶量増大で一層の高強度化に繋がることが明らかとなった。しかし、時効硬化量に着目すると、固溶量を増大した効果はみられず8 HV程度であった。これは時効中に析出物形成ではなく粒界偏析が促進されたためと考えられる。すなわち、Al-Cu系では偏析元素はAlよりも原子半径の小さなCuのみであるため、小角粒界の応力場を効果的に緩和出来ず、高強度化にあまり寄与しなかったことが示唆された。また引張試験は、微小電子機械システム(MEMS)を用いたマイクロ引張試験により行った。これにより、高圧下における固溶量増大とHPT加工の併用で、引張強度も710 MPaに高強度化できることが明らかとなった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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