研究実績の概要 |
【研究の目的】ある種の神経変性疾患においては、脳内に複数の金属の蓄積が認められることが報告されており、脳内の金属代謝を維持することは非常に重要である。一方で、脳内における金属の代謝や動態の制御に関わる分子や機序の詳細は不明である。本研究では、脳内金属代謝機構およびその破綻機構を解明するために、脳内への金属蓄積が指摘される老齢マウスにおいて発現が変動する輸送体を網羅的に解析し、その機能を評価することを目的とした。 【結果の概要】老齢マウスにおける脳内金属輸送体の発現を、若齢マウスと比較解析し、脳内金属蓄積に伴い発現が変動する輸送体を網羅的に解析した。 16、32、64週齢のマウスにおいて、新規物体認識試験を行った結果、64週齢のマウスにおいて認知機能の低下を認めた。また、各マウスから大脳皮質および海馬を摘出し、誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS) にて、組織内金属量 (Fe, Mn, Cu, Zn) の差異を比較解析した。その結果、64週齢のマウスの海馬において、上記金属量の上昇が認められた。このことから、老化に伴い脳における金属代謝機構が破綻し、脳内に金属が過剰蓄積していることが予想された。 次に、老化に伴う脳内の金属代謝破綻機構を明らかとするため、脳での金属代謝に関わることが報告されているタンパク質に着目し解析を行った。各組織から、RNA および DNA を抽出し、老齢マウスにおいて発現が変化するする輸送体を網羅的に解析し、脳内金属代謝制御およびその破綻機構に関わる候補因子を探索した。現在、発現変化が認められた候補輸送体については、金属代謝破綻への寄与などについてより詳細な解析を進めている。
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