研究課題/領域番号 |
19J01824
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
崎田 誠志郎 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 小規模漁業 / ギリシャ |
研究実績の概要 |
本研究は、ギリシャを中心とした東地中海の小規模漁業にみられる漁場利用の実態と漁業管理のあり方を解明することを目的としている。令和2年1月から2月にかけて、ギリシャ・レスヴォスで現地調査を実施した。調査では、レスヴォス漁業者組合(Fishery Club of Lesvos)の代表をはじめとする漁業者への聞き取り調査や、レスヴォス漁業局職員との会議などをおこなった。当時はイガイ漁の最盛期であり、調査ではGPS等を用いた漁場利用の把握もおこなった。また、レスヴォスにあるエーゲ大学(University of Aegean)の地理学部を訪問し、キゾス・アサナシオス教授と研究に関する協議の場を持った。エーゲ大学地理学部とは今後の研究においても協調関係をとることとし、国際的な研究発展につなげていくことで合意した。令和2年3月には、拙著「ギリシャ・アテネにおける水産物市場の特徴と現状」(E-journal GEO 13-2)が2019年度日本地理学会賞(論文発信部門)を受賞した。 令和元年7月にペルー・リマで開催されたXVII Biennial IASC Conferenceにて口頭発表をおこなったほか、東地中海域における研究の成果や今後の計画について、参加者から多くの意見や情報を得た。また、対象国の一つであるキプロスについて、フランス・ブルターニュ=オキシダンタル大学のカティア・フラングデス教授および共同研究者の副島久美講師(水産大学校)と協議するとともに、調査実施のための情報提供を受けた。同じく対象国であるイタリアおよびクロアチアについては、東地中海の漁業に造詣の深いギリシャ・パトラ大学生物学部のコンスタンティノス・クチコプロス教授およびザナトス・ヴァンゲリス博士とビデオ会議をおこない、調査計画の策定に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度終了時点では、現地調査や国際学会での発表をおこない、翌年度以降の現地調査の計画についても他の研究者らと協議することができた。一方で、研究環境の変化や調査準備の難航により、現地調査は年度終盤に集中して実施することにした。令和2年1月から2月にかけてはギリシャで現地調査を実施し、調査地の一つであるレスヴォスの事例に関するデータが一定以上収集できた。これにより、初年度のうちにレスヴォスを事例とする投稿論文の作成に取りかかることができた。2月後半から3月にはギリシャおよびキプロスでの現地調査に赴く予定であったが、これについては COVID-19の感染拡大によって延期を余儀なくされた。 現地調査の実施が年度の終盤となり、かつ2月後半以降の現地調査が延期となったことを踏まえて、初年度終了時点での研究の進捗状況は「やや遅れている」に該当すると判断した。なお、次年度以降も情勢改善の見通しはたっておらず、特に海外における現地調査の実施は極めて困難な状況が継続しているため、現在までに研究計画の大幅な乱れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、海外に渡航して現地の人々と長時間対面でおこなう形式の現地調査が必須となるため、COVID-19の世界的な感染拡大が研究計画に与える影響は極めて大きい。したがって、今後の研究の推進方策はCOVID-19問題の動向に強く左右されることとなる。次年度は現地調査を中心におこなう予定であったが、現状では実施が極めて困難であることから、国内および対象国におけるCOVID-19の感染状況と対策の進展を注視しつつ、現地調査の実施に備えて情報収集や文献のレビューにあたる。これと平行して、現在までの調査結果をもとに論文の執筆・投稿を進めていく。状況の改善により対象国への渡航が可能となれば、初年度に延期を決定したギリシャおよびキプロスにおける現地調査を実施し、その他の現地調査についても順次計画を進めていく。なお、次年度に発表を予定していた学会はすべて翌年以降への延期が決定しており、学会発表については今後の学会の開催状況をみながら対応を検討する。
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