研究課題
魚類の細胞内寄生性細菌感染症は養殖場において最も問題になっている感染症であり、その多くにおいて効果的な防除法が未だ確立されていない。特に、多くの魚種に共通して発生する抗酸菌症の原因細菌であるMycobacterium属細菌は、菌体の最外周部に豊富な脂質層を有しており、これが宿主に対し高い病原性を示す。ほ乳類では、このような脂質抗原に対する免疫応答において非古典的MHCクラスI分子である「CD1」が中心となり、抗原を排除することが知られている。一方魚類では、ほ乳類のCD1に相当する分子がゲノム上に存在しないが、非古典的MHCクラスI分子である「L系統」がCD1に相当する機能を持つことが予想されている。そこで本研究では、L系統を介した細胞内寄生細菌の脂質に対する魚類独自の免疫応答を明らかにすることを目的とした。本研究の対象生物であるニジマスはゲノム上に2種類のL系統分子LAA遺伝子およびLBA遺伝子を持つ。そこで、脂質抗原として知られる、ニジマス抗酸菌症原因細菌Mycobacteoides salmoniphilum由来のミコール酸をニジマスに接種し、14日後、28日後のLAAおよびLBAの遺伝子発現を調べたところ、ミコール酸刺激に対しLBA遺伝子の発現が優位に上昇することが明らかとなった。また、LBA抗原に対するモノクローナル抗体を作製し、LBA発現細胞を調べたところ、マクロファージ等の抗原提示細胞に発現していることが明らかとなった。このとから、脂質抗原はLBA分子によって提示されている可能性があることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Fish Pathology
巻: 57 ページ: -
Developmental and comparative immunology
巻: 124 ページ: 104195
10.1016/j.dci.2021.104195