研究実績の概要 |
2020年度の研究においては、1. 2019年度に衛星由来の流速値と粒子追跡法を用いて算出された「南極海の管理対象種であるライギョダマシの卵・仔魚輸送経路」の結果を用いた論文執筆、2. 南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)のワーキンググループ(WG)のためのレポート執筆、国内外の学会での発表、3. 漂流ドリフター位置観測の継続、4. 共著論文の執筆作業を行った。 具体的には、 1.2019年度に得られたデータの分析、流速データの空間解像度を変更した場合の粒子追跡を別途行なった。分析結果から、世界で初めて東南極海の2つの産卵場候補のうち、主な仔魚の輸送ソースは従来推論されてきたケルゲレン海台南部ではなく陸棚斜面域であることを発見できた。更に、成功輸送には陸棚斜面域に発生する再循環場が重要な役割を果たしていることを示唆できた。10月初期にこれらの結果を含めた論文をFisheries Oceanographyに投稿し、現在は査読中である。 2. CCAMLRのWG、学会を通じて、東南極海におけるライギョダマシの卵・仔魚輸送の知見をアップデートすることができた。 3. 投入された2台の漂流ドリフターの位置情報は申請者のEメールを通して概ね毎日得ることができた。1台(投入:115E, 64.5S)は投入後西方に流され、6月には海氷により通信が途絶えた(107E, 63S)。もう一台(投入:110E, 65S)は東経102度あたりで北上し、10月まで連続して東に流された(154E, 60S)。希少な年間を通した長期の東南極陸棚斜面域の表層流速データを得ることができた。 4. ケルゲレン海台周辺のマゼランアイナメ(ライギョダマシの姉妹種)の資源量に影響を与えた可能性のある海洋熱波の特徴について論文執筆に共著者として参加したことで、本研究以外にも研究の幅を広げることができた。
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