研究実績の概要 |
今年度は、1. 昨年度に引き続き論文原稿の修正作業、2. 南半球環状モードが正(負)偏差において極大になる期間中にモデルデータを用いて東南極海におけるライギョダマシの卵・仔魚の輸送経路の変化の検証を行った。 具体的には、 1.図の修正や、大陸棚(1000 m以浅)におけるデータ欠損が最終的な粒子追跡の結果に大きな影響を与えていないことを示した。5月中に2回目の修正、7月に最終修正を終え、論文はFisheries Oceanographyにて出版済みである。 2.まず使用した海氷による欠損の無い三次元流速場を持つ海氷-海洋結合モデル(COCO)の整合性を、衛星データと比較し確認した。次に南極海の流れ場に影響をもたらす南半球環状モードの強弱に着目し、南極振動指数値を用いて過去50年のデータから、正(負)偏差において極大になる期間を選定した。この期間における、東南極海沿岸域の産卵場からの卵・仔魚輸送経路の変化を観察するため、(i)「月平均の表層流(二次元)のみ」,(ii)「日平均の流速場(三次元)+卵の浮力」,(iii)「日平均の流速場(三次元)+卵の浮力+日周鉛直運動あり」の条件で粒子追跡実験を行った。(i)-(iii)全ての結果において、東西の海域で輸送パターンが正と負の偏差を示す期間ではっきり異なることが判明した。東南極海陸棚斜面西部(東経30-90度)からリリースされた粒子は正負偏差を示す期間に関わらず、南極沿岸流によって生育場である陸棚へ輸送された。一方で、東部の陸棚斜面からリリースされた粒子は正偏差を示す期間に、再循環場と南極周極琉によって沖合に流されてしまうことが判明した。粒子に日周鉛直運動を与えることによって、無い場合よりも輸送成功率が約5%低いことも判明した。得られた結果は、CCAMLRのワーキンググループとIMBeRのシンポジウムで発表した。
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