本研究の目的は、円盤観測と数値シミュレーションの比較を通して、太陽系やスーパーアースのような固体惑星系の形成過程を明らかにすることである。 2021度は、6本の筆頭論文、1本の共著論文を受理された。このうちの1本では、乱流境界線での岩石微惑星形成シミュレーションを通して、太陽系地球型惑星と力学的によく似た惑星系を形成する理論モデルを構築した。この中では、円盤進化最初期の円盤が高温な状態であれば乱流境界線が現在の地球軌道付近に来ること、特定の円盤条件下で太陽系地球型惑星を作るのに望ましい微惑星総量が得られること、形成された惑星が磁気円盤風の助けによって大きな軌道移動を免れることを示した。また、別に受理された論文では、乱流境界線での微惑星形成をALMAおよび次世代望遠鏡ngVLAで観測可能かどうか調べ、太陽より明るいHerbig Ae 型星周りの円盤であれば、ngVLAで乱流境界線を直接空間分解して観測できることを示した。 この他に、スノーライン内側に堆積する岩石ダストがその背後に影を作ることに着目し、その影が円盤構造にどのような影響を与えるか調べた。その結果、岩石ダストが水氷に比べ30倍程度濃集していると、スノーライン背後の温度が30Kを下回ることがわかった。この温度低下は、太陽系の木星大気の揮発性物質の組成をよく再現しうる。 これらと並行し、原始惑星系円盤CW TauのALMA多波長観測についての論文を執筆した。2019年度に私は、原始惑星系円盤TW Hyaの中心領域で、ミリ波散乱によってこれまでダスト質量を25倍過小評価していた可能性を指摘した。この本研究では、原始惑星系円盤CW TauをターゲットとしてALMA多波長観測を行い、ダスト質量の見積もりを行った。その結果、CW Tau円盤は従来の6倍近い200地球質量程度のダストをもつ可能性があることがわかった。
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