研究実績の概要 |
睡眠は記憶の固定化に大きく関与することが知られていながら、その詳細なメカニズムはいまだ十分に明らかになっていない。本研究は、触知覚記憶の定着に必要とされる神経活動及び分子機序を脳部位網羅的に明らかにすることを目的としている。生きたマウス脳の超広域(従来面積比36倍)において高い時間分解能・空間分解能で記録可能な超広視野2光子顕微鏡、FASHIO-2PM (Ota et al., Neuron 2021)を用いて、睡眠時における神経活動と触知覚の定着の相関関係、ならびに学習における神経細胞の活動機序を脳部位網羅的に明らかにすることを目指す。 計画最終年度の本年度は、これまでに確立した超広視野顕微鏡下における睡眠中の神経活動記録法と、床面質感の違いにより触知覚記憶を評価できる床面学習課題(Miyamoto et al., Science, 2016)とを組み合わせた実験パラダイムを実施し、学習前後の睡眠中における1万個以上からなる神経細胞集団の活動記録を進めた。さらに、触知覚の記憶固定化に寄与しているトップダウン入力を抑制したときの睡眠中の神経活動を記録し、その因果関係について解析を進めた。得られた大規模神経活動データの解析から、記憶固定化に寄与する神経ネットワークについて考察を進め、論文化に向け、準備を進めている。 本研究で確立した超広視野2光子顕微鏡を用いた実験フローと関連手法について詳細にまとめ、プロトコル論文として発表した(Oomoto et al., STAR protocols, 2021)。
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