研究課題/領域番号 |
19J02034
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
安本 真士 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 離散微分幾何学 / 微分幾何学 / 離散幾何学 / 可積分系 / 平均曲率一定曲面 |
研究実績の概要 |
今年度は,以下の成果を得た. [1] これまでは3次元ミンコフスキー空間内の離散時間的双等温曲面の特別なクラスとして離散時間的極小曲面を研究していたが,この結果を深化させ,離散時間的双等温という条件を取り払うことに成功し,離散時間的双等温極小曲面の共役曲面およびこれらの変形族の理論を構築することに成功した.さらに,これらの離散時間的極小曲面の各座標関数が離散波動方程式の解となることを示し,この応用として2つの実数値関数のペアを用いた新たな曲面の構成法を得た.2種類の構成法が存在する離散曲面のクラスはこれまでに存在せず,3次元ユークリッド空間内の離散極小曲面をはじめとする離散平均曲率零曲面には決して現れない興味深い現象である. [2] 3次元ユークリッド空間内の半離散平均曲率一定曲面に対する行列型微分差分方程式系(ラックス対)は先行研究において得られていた.まずはこのラックス対の解が,無限次元ループ群に対する岩澤分解と離散ラックス対に対する岩澤分解の両方を応用することで得られることを示し,この応用として3次元ユークリッド空間内の任意の半離散双等温平均曲率一定曲面の構成法を導出した. [3] 4次元ミンコフスキー空間内の離散曲面に対する可積分変換とゲージ変換を応用し,多くのWeierstrass型の表現公式を統一的に導出した.具体的には,3次元ユークリッド空間,ミンコフスキー空間,イソトロピック空間内の離散平均曲率零曲面,3次元双曲空間,ド・ジッター空間内の離散平均曲率一定1曲面に対するWeierstrass型の表現公式を簡素な形で証明することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半離散平均曲率一定曲面の研究に関する研究についてはおおむね満足の得られる成果が得られ,離散時間的極小曲面の研究については当初の想定よりも豊富な結果が得られた.また,多くの離散曲面に対するWeierstrass型の表現公式の統一的導出は当初の研究計画にはなかった望外の成果である.これらの一連の研究成果から発展して新たな研究プロジェクトが生まれつつあり,研究自体は極めて順調に進んでいる.一方で研究成果の取りまとめにやや時間を要していることと,一部当初の計画通りに研究が進んでいないことから,総合的に判断しておおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
まずは今年度に得られた成果を整理し,論文として取りまとめる.また,具体的には次の問題に取り組んでいく. [1] 今年度に得られた成果を応用して,3次元リーマン空間型内の半離散ガウス曲率正一定曲面を新たに構成し,現れる特異点の解析を行う.現れる特異点は対応する半離散sinh-Gordon方程式の解の挙動から特徴付けられることが期待される. [2] 3次元ミンコフスキー空間内の離散時間的極小曲面の一連の研究から発展して,離散平均曲率零曲面の研究を行う.特に,離散時間的極小曲面から離散極大曲面への離散版解析的延長に関する研究打ち合わせを開始しているので,本格的に研究に着手する. [3] 今年度に新たに着手した離散曲面に対するWeierstrass型の表現公式の研究について,残されたクラスである3次元双曲空間,ド・ジッター空間内の特別な離散線形ワインガルテン曲面に対する構成法も同様の手法で導出できるかを検証する. [4] 今年度の研究の進捗状況を踏まえて,当初の研究計画の着手する順序を変更して,3次元ミンコフスキー空間内の離散時間的曲面に対する可積分変換の理論を整備する.特に,Darboux変換の理論に重点を置く.
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