今年度は主に以下の成果を得た. [1] Mason Pember氏(トリノ工科大学),Denis Polly氏(ウィーン工科大学)との共同研究で,初年度に得ていたWeierstrass型の表現公式の導出法を,3次元双曲空間,ド・ジッター空間内の離散Bryant型・Bianchi型線形ワインガルテン曲面にも拡張した.これにより,Weierstrass型の表現公式を用いた従来の離散線形ワインガルテン曲面の定義を改めることに成功した.さらに,連続的な場合に知られていた,3次元双曲空間内の平均曲率一定1曲面に対する双対公式をWeierstrass型の表現公式を用いて記述することに成功した.この研究成果をプレプリントにまとめ,現在国際誌に投稿する前の最終確認を行っている. [2] 3次元ミンコフスキー空間内の離散平均曲率零曲面の研究に着手する準備として,パラ複素数平面上で定義される離散パラ正則関数に関する研究を深化させた.離散パラ正則関数は離散波動方程式を満たすことから,離散版の変数分離に対応する性質が現れる.これにより,離散正則関数の場合とは異なり,従来の複比のみを用いた定式化だけでは判別できなかった離散パラ正則関数と離散反パラ正則関数を完全に区別できることが分かった.現在はパラ正則関数の連続極限について検証を行っている. これらに加えて,2021年3月に大規模国際会議「可視化の数理と,対称性およびモジュライの深化」を対面とオンラインの併用で開催し,本研究課題に係る最新の研究の情報収集に努めた.
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