本研究の目的は、15世紀半ばから17世紀末にかけてのイツァ・マヤ族の内部抗争を考古資料と文献史料によって明らかにするため、これまで黒曜石の産地同定によって得られた結果を基にして、動物骨・植物試料の分析を行い、後古典期チャカン・イツァの居住パターンと交易ルートを再構築し、イツァ領内での内部抗争の痕跡を探ることであった。令和3年度は動物骨の分類と分析を、アメリカ、ミシシッピー大学にて行った。中でも出土した犬の歯は、世界各国の犬の古代DNA分析収集のため、イギリス、オックスフォード大学を中心とする国際的研究チームに出土資料を提供した。研究チームによって古代DNA採取を試みたが、残念ながらデータを得ることはできなかった。この研究結果は論文にまとめられて発表される。また黒曜石研究では、ケンタッキー州のセンターカレッジにおいて形式分類を行った。 文献史料研究では、16~18世紀にかけてスペイン人によって書かれた文献史料の読解を引き続き行い、17世紀イツァ族が敵と対峙する時の行動パターンを探った。週1回の大越教授との勉強会では、後古典期から植民地期のユカタン・マヤ族の戦闘について研究している歴史家を交えて議論を行い、同時期マヤ族の一般的な戦闘のあり方について新たな知見を得た。 令和3年度の研究成果はアメリカ考古学学会とグァテマラ考古学学会にて英語とスペイン語で発表した。アメリカ考古学学会において発表した論文は再構成し、学術論文としてまとめ英文で発表した。
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