本研究では、G = SL_2、LG = PGL_2、C を射影直線P^1 として、5点の確定特異点が存在する場合の幾何学的ラングランズ対応を考察した。この場合、G局所系のモジュライ空間に対応する空間は放物接続のモジュライ空間であり、C上の主LG束のモジュライ空間に対応する空間は放物ベクトル束のモジュライ空間Pである。より具体的に、本研究では、射影直線P^1上に5点の確定特異点が存在する場合の放物接続のモジュライ空間Mの、構造層のコホモロジーを計算した。光明新と齋藤政彦により、放物接続のモジュライ空間が、ある曲面の点のヒルベルトスキームに埋め込まれることが示されている。 このMの幾何学的性質により、この問題はある代数曲面のコホモロジーの計算に帰着された。 0次コホモロジーについて、これまで使用していた論法に誤りが見つかった。そのため改めて、対応する代数曲面を見出し、その構造層の0次コホモロジーを計算した。 高次コホモロジーについて、Mは稠密な開集合M0と余次元が2である部分空間M1との階層構造を持つ。 このM1はアフィン空間と同型であることが知られているが、局所コホモロジーの一般論を用いて計算すると、M1上の構造層に関する2次局所コホモロジーが消えないということが分かった。また、M0上の構造層のコホモロジーは2次以上のものが消滅することを計算で示した。これらのことから、局所コホモロジーを含んだ長完全系列に着目することにより、M0上の構造層の1次コホモロジーと、M1上の構造層に関する2次局所コホモロジーが連結準同型を介して同型であれば、Mの高次のコホモロジーがすべて消滅する、という目的の結果が得られることが分かった。
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