研究課題/領域番号 |
19J10028
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
角田 圭輔 大阪大学, 全学教育推進機構, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | カフェイン / 回転ケージ / ノルアドレナリン / 自発運動 / 視覚 / ラット |
研究実績の概要 |
認知症患者の増加は社会問題となっており、薬に頼らず日常生活を通じた介入手法の確立は急務である。こうした中、食事と運動を組み合わせたマルチドメインが単独介入に比べて大きな効果を発揮すると考えられているが、各介入の神経基盤が不明なため効果的なマルチドメイン介入は未だ確立されていない。食事介入としてのカフェイン、運動介入として回転ケージでの自発運動が知覚認知機能に及ぼす影響を、ラットを対象とした心理物理実験と電気生理実験の両面から検討し、その神経機序を明らかにすることを目的とした。 当該年度は、前年度に構築した視覚認知課題遂行中の頭部固定下ラットから神経活動記録を行うことが可能な実験系を用いて、まずカフェインが、行動及び神経活動に及ぼす効果の検証を行った。ラットに対してカフェインを尾静脈投与した結果、コントロール群に比べて成績が向上する傾向が観察された。さらに一次視覚野における神経活動は、視覚応答の増強もしくは抑制といった神経細胞に応じて異なる神経修飾効果が観察された。さらに運動介入として、ホイールタイプの回転ケージを用いてラットに自発運動を行わせながら視覚刺激を提示させたところ、介入前に比べて介入後に視機能(コントラスト感度)が向上することが明らかとなった。この知覚認知機能の向上効果はアドレナリンβ受容体阻害剤を投与することで認められなくなった。視機能に対するカフェインの作用、および運動介入の結果は、各介入が共通の作用機序として脳内におけるノルアドレナリン放出を介することを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、1) 視覚認知課題を遂行するラットの一次視覚野に局所薬剤投与し同時に神経応答を計測する手法の確立、2) 回転ケージ内で自発運動する動物に対して視覚刺激を呈示する実験系を確立した。これらの実験系を用いて、食事・運動介入の効果を検証した結果、各介入はノルアドレナリンが関与していることが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
食事・運動介入の共通の作用基盤としてノルアドレナリンが関与することが明らかとなった。その神経機序を明らかにするためアドレナリン受容体サブタイプに着目して、各受容体が視覚認知能力にどのような影響を及ぼすのか行動学的、電気生理学的な実験により検証する。
|