本研究は、中枢神経系におけるミエリン形成のマスター転写制御因子であるMyRFの分解制御機構を解明し、本経路を軸に脱髄疾患の治療への応用を目指すものである。 当研究室では、MyRFのユビキチン依存性分解に、ユビキチンリガーゼFbxw7が関与していることを、質量分析計を用いた研究で発見した。これまでにこのFbxw7-MyRF経路が確かなものであるかどうか、組織学的な実験や生化学的な実験を使って明らかにしてきた。昨年度より引き続き行った研究と、新たに作製したマウスや細胞を用いた実験により、おおむね計画通りに研究が進行した。脱髄疾患への治療応用へ向けた研究については、共同研究により開発してきたFbxw7阻害剤の作製がやや難航していたものの、先行して開発を進めていたFbxw7阻害剤の評価系により、得られた阻害剤候補の評価を進めている。また、併せて進めていたこれらの阻害剤を応用していく準備も順調に進行しているため、今後は速やかに研究を遂行していける予定である。 また、本研究において着目しているFbxw7は、MyRF以外にも様々な基質をユビキチン化し、分解に導いていることが明らかとなっている。これらを包括的に理解し、全体像を把握することは、Fbxw7をターゲットとした脱髄疾患への治療を試みるうえで非常に重要なことである。そこで、当初の計画にはなかったが、Fbxw7やその関連分子のノックアウト細胞等を用い、主に次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析をはじめとしたトランスクリプトーム解析、ゲノム解析等を行った。これらを通じ、生体内におけるFbxw7を中心としたさまざまな分子の制御機構と、その意義について広く解析している。
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