研究課題/領域番号 |
19J10040
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
志和 希 北里大学, 獣医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 狂犬病 / 診断法 / 末梢組織 / 洞毛 / メルケル細胞 / フィリピン / 野外発生 |
研究実績の概要 |
本年度は、街上毒狂犬病ウイルスの感染実験マウスとフィリピンの狂犬病発症犬を用いて狂犬病ウイルスの鼻口部洞毛(洞毛)への感染経路および感染時期について検索した。 特に、本年度は発光酵素(Red firefly luciferase)発現組み換え狂犬病街上毒ウイルス(1088/RFLuc株)をヌードマウスの右後肢筋肉内に接種し、ウイルスの洞毛への感染経路および感染時期について精査した。in vivoイメージングによるウイルス動態の可視化と免疫組織化学的解析によるウイルス抗原の経日的な観察から、ウイルスは運動神経を逆行性あるいは知覚神経を順行性に上行し、中枢神経系に到達した後、三叉神経核から三叉神経節に下降し、上顎神経および眼窩下神経を利用して洞毛メルケル細胞に到達した可能性が示唆された。また、洞毛におけるウイルス抗原の発現時期は脳に比べて遅れるものの、感染後期には100%の個体でウイルス抗原が観察された。 以上のことから、実験的に洞毛が脳に代わる新規の診断法として有用である可能性が示唆された。また、感染後期の実験マウスでは、洞毛以外の鼻粘膜やフットパッド(足蹠)からもウイルス抗原陽性像が高率に検出されることが判明し、今後の狂犬病の新規診断法の確立と実装のための新たな診断部位になりえることが示唆された。 次年度も実験感染マウスと野外感染例(イヌ)の解析を継続し、脳に代わる安全で簡便な狂犬病診断法の確立を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験感染例の解析について、研究計画予定通りにマウスの感染実験を実施した。狂犬病ウイルス野外株の洞毛への移動経路・感染時期について解析を進めることができたため、今後野外感染例の解析を進めていくうえで基盤となるデータが得られた。 また、現在野外感染例の収集・蓄積の途中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も実験感染マウスと狂犬病自然発症動物の解析を継続し、脳に代わる安全で簡便な狂犬病診断法の確立を目指したい。 今年度実験感染マウスで得られた結果をもとに、野外感染例を用いて洞毛へのウイルス伝播経路の解明に向けて免疫組織化学的解析・電子顕微鏡検索を行う。ウイルスの三叉神経ルートへの伝播経路に関して、実験感染マウスの解析によって得られた結果について、野外感染例での検証を進める。洞毛へのウイルス伝播時期に関しては、野外感染例の安楽殺例と斃死例との比較により検証する予定である。
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