今年度は、(1)原始太陽系における消滅核種135Csの同位体存在度の見積もり、一部計画を変更し(2)ダブルスパイク法を用いたBa同位体比測定手法の開発を試みた。 (1)炭素質(CK)コンドライト(Maralinga)に対して酸による段階溶出を行い、全岩試料および5つのフラクションを回収した。これらフラクションのBa同位体データは前年度に実施した炭素質コンドライトのBa同位体データの特徴とは異なっていた。元素濃度測定の結果、これらフラクションのSrやBa元素濃度は通常の炭素質コンドライトに比べ非常に高い値であり、これは砂漠隕石でしばしばみられる地球上の風化の影響の特徴と一致していた。このため、本研究で使用したMaralinga隕石は地球上での汚染の可能性が考えられ、そのBa同位体データから135Cs放射改変由来の135Ba同位体異常の検出は困難であった。また、昨年度に分析した炭素質コンドライト中のBa同位体データを詳細に解析し、Cs/Ba元素濃度データを組み合わせることで消滅核種135Csの同位体存在度を見積もった。この研究成果は国際学術誌(Geochemical Journal)にて掲載された。 (2)バリウム同位体比分析の新たなアプローチとして、ダブルスパイク法を用いた分析手法の開発を試みた。本研究では、130Baスパイクに同程度の138Baが含まれていたため、130Baスパイクをそのまま用いて130Ba-138Baの同位体の組み合わせのダブルスパイクとして使用した。まず初めに、130Baスパイクの同位体組成を決定するために、total evaporation法を用いた同位体比測定を実施した。また、複数の試料(バリウム標準溶液、標準岩石試料、普通コンドライトおよびユークライト)に対して、ダブルスパイク法を用いた同位体比測定を実施した。これらの同位体データは現在解析中である。
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