1. 非有界領域を含む一般領域において,相転移を伴う圧縮性・非圧縮性粘性二相流体の自由境界問題の時間局所適切性を示した.ここで,本研究では,圧縮性粘性流体を記述する方程式として,圧縮性ナビエ・ストークス方程式の代わりに,ナビエ・ストークス・コルトヴェーグ方程式系を用いた,従来のナビエ・ストークス・フーリエ方程式系に代わる新しい数理モデルを考えている.また,有界領域における方程式系の時間大域解についても考察した.流体の占める領域が有界領域の場合,領域の有界性から複素平面の原点がレゾルベントであることがわかった.これより,領域が有界である場合,線型化問題に付随する解析的半群は指数減衰することがわかった.しかし,表面張力に由来するラプラス・ベルトラミ作用素の固有値問題を扱う上で圧縮性粘性流体の重心の補正を行ったため,非線型問題を扱うには圧縮性粘性流体の重心の評価が必要なことがわかった.表面張力を伴う圧縮性粘性流体の自由境界問題を扱った Zajaczkowski (1994) ではラグランジュ変換を用いることで重心の評価を巧みに導出しているが,自由境界面上で相転移が生じている場合はラグランジュ変換を用いることができないので,研究計画を見直す必要が生じた.以上より,方程式系の時間大域適切性の考察はやや遅れている. 2. 外部リプシッツ領域におけるナビエ・ストークス方程式に関する研究を行った.特に,空間変数に関する可積分指数を制限した場合,外部リプシッツ領域においてストークス作用素が最大正則性を持つことおよびストークス半群が有界解析半群になることを示した.さらに応用として,スケール不変な関数空間での軟解の存在を得た.すなわち,時間局所解と小さな初期値に対する時間大域解を得た.なお,この共同研究で得た結果は Taylor (2000) の予想を外部領域の場合に肯定的に解決したものを含む.
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