研究課題/領域番号 |
19J10171
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大村 太朗 神戸大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 高分子微粒子 / セルロース / イオン液体 / 多孔質粒子 / 中空粒子 / 界面 / 複合材料 / 銀ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本年度は,以下の項目を中心として検討を行った。 ①セルロース粒子の内部構造の制御およびその形成機構の解明 本検討では,セルロースを析出させる溶媒(非溶媒)を様々に変えることで,これまでに得られていた多孔質構造以外の単中空構造や多中空構造の粒子の作製を試みた。具体的には,セルロースを溶解した1-ethyl-3-methylimidazolium acetate ([Emim]Ac)をヘキサンに分散させた後,[Emim]Acとの親和性が異なる様々な溶媒によりセルロースを析出させて粒子を作製した。その結果,[Emim]Acと非溶媒の親和性が小さくなる従い,得られたセルロース粒子の内部構造は多孔質から多中空構造,単中空構造へと変化し,非溶媒の種類により内部構造を制御することに成功した。また,懸濁滴内におけるセルロースと[Emim]Acの相分離が界面自由エネルギー支配のもとで進行した場合に単中空構造が形成されることを明らかにした。以上の成果において,単中空構造セルロース粒子を簡便なバッチ系で作製した例は初めてであり,非常に意義の知見が得られたと考えられる。
②多孔質構造を利用したセルロース/銀複合粒子の作製 本検討では,多孔質構造を有するミリサイズのセルロース粒子の構造表面上において銀ナノ粒子を合成し,繰り返し利用可能な触媒材料の作製を試みた。具体的には,2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxylを利用した酸化反応により,多孔質構造表面上のほぼ全ての第一級アルコールを酸化した後に,銀イオンの配位・および還元反応を行うことで,セルロース/銀複合粒子の作製に成功した。さらに,4-ニトロフェノールの銀ナノ粒子による還元反応の触媒として得られた複合粒子を用いたところ,これまでに報告されている他の複合材料に匹敵する,またはそれ以上の触媒能を有することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果として,用いるイオン液体とセルロースを析出溶媒の親和性が得られる粒子の内部構造に与える影響を明らかにし,また,単中空構造粒子の形成機構をセルロースの析出速度と界面自由エネルギーの観点から説明することに成功した。粒子径の影響については現在引き続き検討中である。さらに,金属ナノ粒子との複合化についても本年度に取り組み始めることができ,ハンドリング性能が良く,かつ触媒能に優れたセルロース/銀複合粒子の作製に成功し,セルロース粒子と金属ナノ粒子との複合化の設計指針を示すことに成功した。 これらに関連する研究成果について学会発表を行い、学術論文として掲載または投稿中である。従って,本年度の研究については,おおむね順調に進捗し,十分な研究成果と知見を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度において,粒子径の影響の検討を引き続き行う。具体的には,偏光顕微鏡および透過型電子顕微鏡による粒子の内部構造の観察・同定を行い,相分離空間大きさの影響を調査する。単中空構造セルロース粒子については,内部の空間に物質を内包可能かどうかを調査し,可能な場合は内包および放出させる検討を進め,カプセル粒子への応用を試みる。また,グラフェンとの複合化については,まず,グラフェンをセルロースのイオン液体溶液に分散させる方法を調査し,その後,粒子の作製および機能性の評価へと進展させる。
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