研究課題
昨年度に引き続き、アルテスネートによる腸発がん抑制効果について、培養細胞およびモデル動物(マウス)を用いて検討を行った。本年度は、まず昨年度に質量分析にて解析を行ったアルテスネート結合タンパクの候補集団から真の結合タンパクを導き出すことを実施した。方法として、siRNAを用いて各候補タンパクの発現をノックダウンさせ、TCF/LEF転写活性(Wntシグナル)への影響を評価した。さらに、各タンパクの発現レベルが減少している状態でアルテスネートを投与した際、TCF/LEF転写活性の抑制効果が消失するかを検討した。その結果、最終的にアルテスネート結合タンパクとして、RANタンパクを同定した。RANタンパクは、細胞質核間輸送制御因子として知られており、主にNLS配列を持つタンパクを細胞質から核へと輸送制御している。次に、ウエスタンブロッティング法を用いてアルテスネート投与によるRANタンパクの発現レベルを検討したところ、影響は見られなかった。このことから、アルテスネートはRANタンパクの発現を抑えるのではなく、機能を阻害していると考え、Wntシグナル関与タンパクの中でNLS配列を含んでいるTCF4とTCF1/TCF7に着目した。そして、アルテスネート投与時のTCF4とTCF1/TCF7のタンパク発現量を検討したところ、TCF1/TCF7においてアルテスネート投与による発現レベルの減少が確認された。さらに、免疫蛍光染色法を用いてTCF1/TCF7の細胞内局在を評価したところ、アルテスネート投与によって核内の発現量が減少すると共に、細胞質の発現量が増加することが確認された。以上の結果より、アルテスネートは、RANタンパクに結合することでTCF1/TCF7の核内移行を阻害することを示したと共に、最終的に、Wntシグナルが制御する細胞増殖および腸ポリープ生成数を抑制することを明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Carcinogenesis
巻: 42 ページ: 148-158
10.1093/carcin/bgaa084.