研究課題/領域番号 |
19J10214
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
室谷 岳寛 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 数論的基本群 / 遠アーベル幾何学 / 双曲的曲線 / p進局所体 / モチーフ積分 / 弱ネロンモデル / 実閉体 |
研究実績の概要 |
今年度は主に、p進局所体上の双曲的曲線に対する絶対版グロタンディーク予想の当否を決定することを目指した。これまでの研究により、この問題は双曲的曲線のあるp進解析的な不変量の群論的な復元に帰着できることが分かっていたが、今年度は、この不変量の一般化と解釈できるモチーフ論的な不変量とこの問題の関係について研究を行った。詳しく述べると、p進局所体上の固有かつ滑らかな曲線に対し、その弱ネロンモデルの特殊ファイバーが定める(剰余体上の多様体の)グロタンディーク環の元はある不定性を除いて弱ネロンモデルの取り方に依存しないことが知られており、この不変量から上記のp進解析的不変量が得られる。本研究においては安定モデルの特殊ファイバーの群論性(望月新一氏による結果)が重要な背景となっており、安定モデルと弱ネロンモデルを関係づけることは難しくないため、当初は有力なアプローチと思われ、実際、いくつかの有益な知見が得られたが、問題の解決にまでは至っていない。 また、p進局所体の類似として実数体上の双曲的曲線に関する研究も計画していたが、こちらは、星裕一郎氏、辻村昇太氏との共同研究で一定の成果を得た。具体的には、実数体(あるいはより一般に実閉体)上の固有かつ正規な多様体の数論的基本群において、幾何的部分群の群論的特徴づけが可能であるためのいくつかの十分条件を得た。この結果は共著論文の形にまとめた。 また、2019年8月に、中国科学技術大学において、それまでに得られていた研究成果についての講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はp進局所体上の双曲的曲線に対する絶対版グロタンディーク予想の当否を決定することを計画していた。この問題に関して、上記のように有益な知見はいくつか得られたものの、解決には至っていない。 また、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの研究集会が中止または延期となり、予定していた情報収集が十分に行えなかった。 一方で、関連する問題として、実数体上の双曲的曲線(あるいはより一般の多様体)については一定の結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
上記のアプローチがうまくいかなかった原因は暴分岐という現象の難解さにあり、これまでの進捗に鑑みても、新たなアプローチの可能性を探る必要があると思われる。そのため、p進局所体上の双曲的曲線に対する絶対版グロタンディーク予想に関連する周辺の問題(完備離散付値体の分岐に関する問題や、正標数の局所体の問題等)にまで範囲を広げて研究を行う予定である。一方で、このアプローチが無効であることを示唆する知見も得られていないため、関連分野の最新情報を収集しつつ検討を続ける必要がある。
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