研究課題
本研究の目的は,児童を対象として,ポジティブボディイメージを高める介入法を開発し,その効果を検証することである。初年度である令和元年度は,下記の研究成果を得た。(a)児童のボディイメージに関する基礎的な質問紙調査を行い,ボディイメージの問題は児童期から生じていることが示された。また,児童におけるポジティブボディイメージの適用可能性の検討のため,Body Appreciation Scale-2 for Children(BAS-2C)の日本語版を作成したところ,十分な信頼性・妥当性が示された。(b)介入モデルの構築および検討を行った結果,ポジティブボディイメージの形成に関連する要因として,セルフ・コンパッションおよび感謝によって高まったポジティブボディイメージが,適応的調和食行動およびウェルビーイングを促進するというモデルが示された。また,女性は,メディアの影響によってポジティブボディイメージが低くなることが示された。さらに,ポジティブボディイメージを高めることで,ボディイメージのみならず,食行動やウェルビーイングにおいても,適応的な変化が期待できることが示された。(c)児童を対象としたポジティブボディイメージを高める心理教育プログラムを開発し効果を検証した。プログラムの開発にあたっては,(b)において,ポジティブボディイメージを形成する要因であることが示されたセルフ・コンパッションおよび感謝,メディアの影響に焦点をあてた集団実施の1次予防的なプログラムを開発した。(a)で作成した日本語版BAS-2Cを使用して,児童を対象に,心理教育プログラムの有効性を検討した結果,心理教育プログラムによってポジティブボディイメージが高まり,その効果は3ヵ月間維持されることが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
令和元年度は,当初の予定通り,Body Appreciation Scale-2 for Children(BAS-2C)の日本語版作成および児童のポジティブボディイメージを高める心理教育の開発を実施することができた。さらに,令和2年度に実施する予定であった,介入モデルの構築および心理教育の効果検証も実施することができたため,期待以上の研究の進展があったと判断した。
令和2年度は,これまでの研究で得た研究成果を社会に還元すべく,論文を執筆し,学術雑誌に投稿する予定である。また,これまでの研究をさらに発展させるために,新たな研究計画を立案する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
Body Image
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