今年度は、新型コロナウィルスの感染拡大、およびそれに伴う緊急事態宣言の発令により、研究活動に多大な支障を来した。特に本研究の遂行にとってもっとも不可欠な地方への史料調査について、所属機関の出張制限、所蔵先の利用制限、および地方への感染蔓延を防止する観点から、多くの出張計画を取りやめせざるを得なかった。 そのため、主に以下の二点において当初の計画を変更し、研究を進めてきた。まずは、前年度から継続している課題である府県会常置委員の研究について、研究の中心を行政との関係から、議会での合意形成の仕組みにシフトした。主に議会史を利用して、各府県の議会組織、議事過程を考察し、合意形成の構造を明らかにした。地方自治・地方政治史研究のみならず、議会史の視点からみても有意義な結論を得られたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、報告予定のあった学会が中止となったため、成果の発信が予定より遅れることになった。他方、新しい課題として、府県と「国郡制」との関係について、アクセスしやすい中央政府の公文書や中央政治家の個人文書を利用して検討してみた。近代史研究のみならず、前近代の研究成果との接続にも資した成果を得ており、それがすでに査読論文として掲載となった。 なお、本研究の完成に向けて、比較史的な視角を導入し、他国の地方制度/地方自治についての文献を博捜し勉強した。その上で、日本の事例の特殊性を見出して、博論の序章を無事完成した。現在、博論を構成する各章の内容はほぼ揃っており、最後の仕上げとなっている。
|