研究課題
ペロブスカイト型構造の酸窒化物BaTaO2Nは酸化物イオンと窒化物イオンの非対称な分布により自発分極をもつ強誘電体であると過去の研究で予想されてきたが、高密度なセラミックスや単結晶の作製が極めて困難であるために強誘電性の有無等の本質的な物性は不明であった。筆者はBaCN2という物質が種々の酸窒化物の溶媒として有用であり、数ミクロンサイズのBaTaO2Nの単結晶を作製できることを発見した。本年度は作製したBaTaO2Nの微結晶の圧電性を圧電応答顕微鏡を用いて評価したところ、100 ℃, 100 Vの条件で明瞭な分極反転を伴うシグナルが得られた。これはペロブスカイト型酸窒化物が強誘電性を示すことを実証する、信頼性の高い結果であり、アニオンの非対称な分布により強誘電性を物質に導入できることを意味する。この知見は、将来の誘電体材料の設計指針の確立に貢献すると期待される。筆者は上記の研究と並行して一連のアルカリ土類金属カルボジイミドの熱分析実験を行い、融点がCaCN2>SrCN2>BaCN2の順の高さであることを明らかにした。さらにBaCN2以外は融液が金属と炭化物、窒素に分解することを確認した。これらの分解反応のギブスエネルギーを第一原理計算による結晶構造の最適化とフォノンシミュレーションから求めたところ、BaCN2だけは実測された融点よりも高温まで分解反応が進行しないことが分かった。この原因として、BaCN2は他の二者よりも格子エンタルピーが小さいために十分に融点が低く、融液が分解しにくいためであると考えられる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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