研究実績の概要 |
前年度に明らかにした炎症応答が変異細胞の排除を抑制するという結果に基づき、マウスモデルの解析を行なった。具体的には当研究室で樹立した細胞競合モデルマウスに膵炎を誘導し、炎症と変異細胞の排除の関係性をvivoにおいても明らかにした。 さらに、これまで同定した正常細胞と変異細胞の相互作用の結果起こる炎症応答の上流を理解するために、細胞自律的・細胞非自律的な変化の解析を行った。様々な候補の中で、MDCK細胞の膜電位に着目し解析を行なった。具体的な内容を以下に示す。 (1) 膜電位の変化を可視化できる染色方法の確立:これまで報告がなされている試薬の中で、違ったメカニズムによって膜電位を可視化できる、1. Rho6G, 2. DiBAC(4)3, 3. FluoVoltを用いた。膜を脱分極させるカリウムイオンが高濃度に含まれているバッファーを用い、膜が脱分極した際にこれらの試薬が膜電位を反映し蛍光を失う/発するのかを検証した。結果、全ての試薬において膜電位を反映することがわかった。 (2) 膜電位の変化の解析:正常細胞とRasV12変異細胞の膜電位を測定した。正常細胞と比較するとRasV12変異細胞ではより膜が脱分極していることを明らかにした。さらに、混合培養下では正常細胞に囲まれたRasV12変異細胞の膜の脱分極が抑えられている様子も明らかにした。上記の細胞自律的/細胞非自律的な膜電位の変化に加えて、細胞膜上のFluoVolt試薬が非常に激しく動いている様子も観察された。この結果から細胞の辺上で膜電位の変化がoscillationしている可能性が考えられる。今後、共同研究によって波が存在するかどうかの可否、または正常細胞-変異細胞間で何らかのやりとりがあるのかどうかを明らかにする。
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