• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

牧羊犬のヒツジ追い現象に着想を得た機動制御法の創成

研究課題

研究課題/領域番号 19J10373
研究機関大阪大学

研究代表者

角田 祐輔  大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワード制御 / マルチエージェントシステム / 群ロボットシステム / 非線形システム / 安定性解析 / 非線形力学 / シープドッグシステム / 機動制御
研究実績の概要

本研究では牧羊犬のヒツジ追い現象に着想を得て,多数のエージェント群(以下,ヒツジ群)を少数のコントローラエージェント(以下,牧羊犬)の高い機動性を活かして制御する方法を機動制御法と称し,その制御原理を抽出することを目的とする.採用1年目ではまず,1匹の牧羊犬が,牧羊犬から逃げる複数のヒツジ群をあるゴールエリアに囲い込む誘導問題に対して,ヒツジの重心をターゲットとして追跡し群れを誘導する牧羊犬の機動制御則を構築し,その安定性解析を試みた.2体以上のヒツジの誘導は多体問題となるため厳密解は得られないことから,本研究ではヒツジ群は群れる,つまりヒツジ同士の相対距離が安定して収束することを前提として,「ヒツジ群の挙動をその群れの重心点にいる1体のヒツジの挙動と近似できる」と仮定し,多体問題を1体のヒツジと1体の牧羊犬の2体問題に置き換えて解析を行った.結果,システムは平衡点近傍で安定であり,誘導に必要な牧羊犬の機動性の設計論を数理的に明らかにした.この結果は,多数のエージェント群を1体のエージェントとみなして制御するという,マルチエージェントシステムの設計論構築の一助になると考えられる.
次に,上記のシステムをシンプルに実機実現するために,ヒツジ同士の相互作用を廃した「群れないヒツジ群」に対して誘導可能な機動制御則を新たに提案し,誘導性能を検証した.結果,牧羊犬は重心ではなくゴールから一番遠いヒツジを追跡し誘導する方が効率的であることがわかった.この結果は,複数のエージェント群を誘導するために重要な情報は群れの外縁部(外側のヒツジの位置)であることを意味し,牧羊犬に必要な情報を削減できる可能性を示した.
最後に,モーションキャプチャシステムを用いた実験システムを構築し,線形シープドッグシステムにおける牧羊犬ロボット1体, ヒツジロボット5体の誘導を実験し,提案法の妥当性を検証した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では,牧羊犬のヒツジ追い現象に着想を得て,多数のエージェント群を少数のコントローラエージェントの高い機動性を活かして制御する方法を機動制御法と称し,その制御原理を抽出することを目的にしている.その目的を達成するために,STEP 1 : ヒツジ群を誘導する少数の牧羊犬の機動制御則を構築,STEP2 : 誘導システムの安定性を解析,STEP3 : 実機実験による安定性解析の妥当性を検証,の1-3を繰り返し行う.採用第1年度目ではすでにSTEP 1, 2を達成しており,STEP 3の実機実験システムの構築まで行っている.また,得られた研究結果について,1本の査読付き学会誌(筆頭),1本の解説記事,2本の国内発表, 3本の国外発表(3本とも筆頭),うち国際学会の論文の1つが論文発表奨励賞を受賞した.
本研究の特に注目すべき点は,システムの挙動を,単なるシミュレーションではなく,数理的に理論検討している点である.その結果,ヒツジの群れの重心を追跡するのではなく,ゴールから一番遠いヒツジを追跡しつつ,群れを発散させないようにイヌから最も近いヒツジから離れながら誘導する方が効率的であることが理論的に帰結できた点は大きな成果である.また,牧羊犬ロボット2体, ヒツジロボット5体の誘導を実験し,提案法の妥当性を検証した.以上から,本研究は,当初の予想を上回る結果が得られているといえる.

今後の研究の推進方策

今後の研究では,実機実験による中心追跡制御の妥当性の検証,および機動制御理論の構築を行う予定である.具体的には,まず構築した実験システムを用いて中心追跡制御による複数のヒツジの誘導実験を行うことで,上記の「群れの挙動を1体のヒツジの挙動に近似する」という仮定の妥当性を示す.その結果に基づいて,相互作用を廃し,牧羊犬から反射的に逃避するようなシンプルなヒツジを設計し,誘導に必要な牧羊犬の総数や速度上限(機動性)とヒツジ群の総数・速度・凝集度との関係を考察する.最後に,理論・実機の両面から機動制御理論の体系化を行うことで本研究をまとめる.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] シープドッグシステムから紐解くマルチエージェントシステムの制御2020

    • 著者名/発表者名
      末岡 裕一郎、角田 祐輔
    • 雑誌名

      計測と制御

      巻: 59 ページ: 125~130

    • DOI

      https://doi.org/10.11499/sicejl.59.125

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Theoretical Analysis of Mobile Control Method for Group Agents Motivated by Sheepdog Shepherding2019

    • 著者名/発表者名
      TSUNODA Yusuke、SUEOKA Yuichiro、WADA Teruyo、OSUKA Koichi
    • 雑誌名

      Transactions of the Society of Instrument and Control Engineers

      巻: 55 ページ: 507~515

    • DOI

      https://doi.org/10.9746/sicetr.55.507

    • 査読あり
  • [学会発表] Exploration of sheepdog controller for sheep flock navigation based on the model derived from a real shepherding2019

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Tsunoda, Yuichiro Sueoka, Koichi Osuka
    • 学会等名
      The 9th International Symposium on Adaptive Motion of Animals and Machines
    • 国際学会
  • [学会発表] Analysis of sheepdog-type navigation for minimal sheep model2019

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Tsunoda, Makihiko Ishitani, Yuichiro Sueoka, Koichi Osuka
    • 学会等名
      The 3rd International Symposium on Swarm Behavior and Bio-Inspired Robotics
    • 国際学会
  • [学会発表] Sheepdog-type robot navigation: Experimental verification based on a linear model2019

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Tsunoda, Yuichiro Sueoka, Teruyo Wada, Koichi Osuka
    • 学会等名
      The 2020 IEEE/SICE International Symposium on System Integration
    • 国際学会
  • [学会発表] 磁石結合・分離機構を搭載した非自走型群ロボットによる協調行動の実現2019

    • 著者名/発表者名
      重吉比呂,末岡裕一郎,木田友葉,角田祐輔,大須賀公一
    • 学会等名
      第63回自動制御連合講演会
  • [学会発表] 非線形なシープドッグシステムにおける安定性解析2019

    • 著者名/発表者名
      石谷槙彦,末岡裕一郎,角田祐輔,大須賀公一
    • 学会等名
      第37回日本ロボット学会学術講演会
  • [備考] 大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻知能機械学部門動的システム制御学領域大須賀杉本研究室

    • URL

      https://www-dsc-mech.eng.osaka-u.ac.jp/publication

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi