農業用管水路はその大半が高度経済成長期に整備されたものであり,老朽化が進んでいるため漏水・破損事故は年々増加の一途をたどっている。管内の圧力変動を用いた漏水検知法は,他手法と比較して低コスト,少労力で漏水検知が実現できると期待されている。この手法では,管路通水中にバルブを閉塞することで意図的に圧力波を発生させ,この時に管内で圧力観測を行うことで周期的な圧力の時間変動(以下,圧力変動)を取得する。もし,管内に漏水がある場合は,圧力波が漏水部で反射し観測点に到達することで圧力変動に圧力低下が生じ,漏水部からのエネルギー流出によって圧力変動の減衰が大きくなる。よって,本手法は圧力変動の変化を読み取ることで漏水検知する(漏水位置を特定する)方法であると言える。本研究では,(1)漏水部からの反射波を利用した漏水検知法と(2)圧力変動の減衰を利用した漏水検知法について新たな方法を開発した。 漏水部から反射波を利用した漏水検知法は,漏水の規模が小さいまたは管構造が複雑で圧力変動が複雑になった際に,目視で漏水による圧力低下を読みとれないという問題点があった。そこで,漏水がない場合と漏水がある場合の圧力変動を比較し,最適化手法を組み合わせることで自動的に漏水による圧力低下を読み取り,漏水位置を推定する手法を開発した。 圧力変動の減衰を利用した新たな漏水検知法では,圧力変動の減衰と漏水位置との関係を解析的に導出することを行った。漏水による圧力変動の減衰は漏水部からのエネルギー流出と密接に関係していることから,漏水による管路全体のエネルギー減衰を求めることで,圧力変動の減衰を表す減衰モデル式を導出した。 以上の開発した二つの手法は,数値シミュレーション,模型管路実験,現場管路実験によって,有効性が示された。
|