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2019 年度 実績報告書

第一原理計算によるハーフメタリックホイスラー合金の磁気励起特性

研究課題

研究課題/領域番号 19J10512
研究機関大阪大学

研究代表者

奥村 晴紀  大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワード第一原理計算 / スピン波 / ホイスラー合金 / ハーフメタル / GW近似
研究実績の概要

本研究では従来の局所密度近似(LDA)法による計算を超えて、高精度に基底状態を計算することができる準粒子自己無撞着GW(QSGW)法を用いて研究を進めた。QSGW法を用いてホイスラー合金の基底状態を計算した例は少なく、さらにスピン波を計算した例はない。LDAを超える手法としてone-shot GWなども考えられるが、LDAの一体ハミルトニアンによる影響を受けるため、適用範囲が限られているなど問題がある。QSGW法はセルフコンシステントにハミルトニアンを決定するため、高精度な基底状態の予測が可能だと考えられている。当該年度は、研究代表者が第一原理計算パッケージecalj内で開発したスピン波のコードを、 (i)強磁性金属フルホイスラー合金 Cu2MnAl, Ni2MnSn, Pd2MnSn; (ii)ハーフメタリックホイスラー合金Co2MnSi, Co2FeSi、に適用した。
(i)3つの合金のスティフネス定数は実験値をよく再現することを確認した。過去に報告された分光による測定と比較して、QSGW法は局在したMn3d軌道のエネルギー準位を高精度に予測する。
(ii)QSGW法ではCo2MnSiだけでなく、Co2FeSiの磁気モーメントの予測精度が高いことを確認した。一方でスティフネス定数について、Co2MnSiで実験値を再現するが、Co2FeSiで過小評価する傾向を確認した。また、この2つの材料について、one-shot GWとQSGW法の違いを議論し、QSGW法の結果がLDAのハミルトニアンにほとんど依存しない結果を得ている。
上記の研究結果は、局在磁性を含むホイスラー合金について、QSGW法の有効性を明らかにした点で意義がある。「高いキュリー温度をもち、高温で高スピン偏極を示すハーフメタリックホイスラー合金の探索をおこなう」ためのデータベース作成の土台となる点で重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

QSGW法を用いて、上述したホイスラー合金について基底状態と動的磁気帯磁率(スピン波)を計算し、その結果を論文・学会で報告した。データベース構築の土台として、QSGW法の有用性を評価した。局在軌道の3dのエネルギー準位やスピン波スティフネス定数について、QSGW法は実験値をよく再現する傾向にあることを明らかにした。現在までに、30程度のホイスラー合金についてスピン波の計算を終えている。磁気モーメントやスティフネス定数などをまとめてデータベース化している。
キュリー温度を計算するという点では、得られた動的磁気帯磁率を平均場近似、乱雑位相近似で求めることも考えられたが至っていない。技術的な理由として、動的磁気帯磁率の計算における計算時間の問題があった。これについては計算時間短縮のためのコーディングをおこない、高精度にスピン波を計算できるように開発したことでおおよそ解決された。理論的な問題としては、低温のスピン波理論を有限温度に拡張することの問題点が考えられる。
そこで、キュリー温度や有限温度の磁気特性を議論するために、現在までにテトラへドロン法を有限温度に拡張するコーディングをおこなった。キュリー温度およびスピン揺らぎによる比熱の計算には、有限温度のスピン揺らぎのエネルギーから計算するアプローチも考えられる。以上のキュリー温度を計算するための土台として、絶対零度における動的磁気帯磁率のコーディングおよび有限温度におけるテトラへドロン法の拡張することができた。

今後の研究の推進方策

ハーフメタルで、局在磁性をもつフルホイスラー合金は低エネルギー域でスピン反転励起(ストーナー励起)がおこらないため、本研究の手法ではスピン波の寿命は無限大となる。スピン波の寿命を有限の値にするために、(i)有限温度に拡張すること、(ii)スピン軌道相互作用を導入することなどが挙げられる。本年度は有限温度での動的帯磁率の計算するためのコーディングをおこなう。そのために、昨年度に開発した有限温度のテトラへドロン法を用いる。
また、キュリー温度を予測するため、動的磁気帯磁率におけるスペクトルピークからスピン波のエネルギーを求めて調和平均をとる。また、有限温度のスピン揺らぎのエネルギーを計算できるようにコーディングし、それらの物性値からキュリー温度を予測する。開発したコードを用いて、実験データの豊富なCo基フルホイスラー合金について計算値と実験値との違いを議論する。Co基以外の合金として現在までに数10種類の3d遷移金属の計算を終えている。Ru2YZなどの4d遷移金属を含む系について、理論的にハーフメタルであることが予想されている材料があるため、それらについてスピン波の計算およびキュリー温度の計算をおこなう。数100種類のホイスラー合金について、スティフネス定数、キュリー温度などの計算値を系統的にまとめ、データベースを作成する。
本研究に必要なecaljコードの開発や方針の打ち合わせのために、鳥取大学への2週間程度の滞在を予定している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Electronic Structure and Spin-wave Dispersion of Cu2MnAl, Ni2MnSn, and Pd2MnSn Based on Quasi-particle Self-consistent GW Calculations2020

    • 著者名/発表者名
      Okumura Haruki、Sato Kazunori、Suzuki Katsuhiro、Kotani Takao
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 89 ページ: 034704~034704

    • DOI

      10.7566/JPSJ.89.034704

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spin-wave dispersion of 3d ferromagnets based on quasiparticle self-consistent GW calculations2019

    • 著者名/発表者名
      Okumura H.、Sato K.、Kotani T.
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 100 ページ: 054419~054419

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.100.054419

    • 査読あり
  • [学会発表] Spin-wave dispersion of Cu2MnAl, Ni2MnSn, and Pd2MnSn based on quasi-particle self-consistent GW2020

    • 著者名/発表者名
      Haruki Okumura, Kazunori Sato, Takao Kotani
    • 学会等名
      APS March Meeting 2020
    • 国際学会
  • [学会発表] QSGW法に基づく金属ホイスラー合金のスピン波スペクトル計算2019

    • 著者名/発表者名
      奥村晴紀、佐藤和則、小谷岳生
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] Spin-wave dispersion of 3d ferromagnets based on quasiparticle self-consistent GW calculations2019

    • 著者名/発表者名
      Haruki Okumura, Kazunori Sato, Takao Kotani
    • 学会等名
      ASIAN-22
    • 国際学会
  • [学会発表] Spin wave dispersion of 3d ferromagnets based on QSGW calculations2019

    • 著者名/発表者名
      Haruki Okumura, Kazunori Sato, Takao Kotani
    • 学会等名
      Materials Research Meeting 2019
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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