令和2年度は以下の(1)~(4)の課題についてそれぞれ成果を挙げた。 (1) ヒルベルト関数に関する研究である。ヒルベルト関数は概多項式関数であり、Northcottによってヒルベルト係数間の不等式が与えられて以降、様々な視点から研究が進められている。本研究では、節減数2のイデアルのヒルベルト関数について、Northcottの不等式より強い新たな不等式を与え、その等号成立条件が随伴次数環の不変量が「環の次元-1」以上であることを特徴づけていることを得た。特に、整閉イデアルの場合にCorso-Polini-Rossiの定理を回復することを得た。 (2) ブルバキ完全列に関する結果である。ブルバキ完全列は、その存在定理こそよく知られているが、ブルバキ完全列を具体的に構成する手法については知られていなかった。本研究では、正規ネーター整域上の反射的加群に対して、自由加群からの線型写像が与えられているとき、その線型写像がブルバキ完全列を導出するか否かの判定法を与えた。応用として、次数付き加群の場合にブルバキ完全列の遍在性を開集合と対応させて記述できることを示した。 (3) 特殊な振る舞いをするヒルベルト関数に関する研究である。ヒルベルト関数は概多項式関数であることから十分大きい値からは単調増加関数になるが、その一方で多項式関数挙動をする前の振る舞いについてはあまり知られていない。本研究では、単項イデアルの冪の生成系の個数について、多項式関数挙動をする前は常に減少するという例を与えた。 (4)加群の既約指数に関する研究である。加群の既約指数について、平坦写像を経由してどう変化するかの評価式を与えた。応用として、双対的概念であるsum irreducibilityの間の関係について精査した。
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