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2019 年度 実績報告書

シナプス前終末の超高速分泌と分泌細胞の緩徐分泌の分子・原子基盤の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19J10613
研究機関東京大学

研究代表者

守本 祐一  東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワード蛍光プローブ / 開口放出 / シナプス前終末
研究実績の概要

シナプス前終末におけるSNAP25のdomain swapping構造の機能的意義の評価に関しては、ガラスピペット先端での機械刺激などによってシナプス小胞を活性帯に結合させる方法が新たに見つかり、機械刺激後にswappingが起こることを示唆する結果も得た。この方法を利用して、機械刺激後にswapping構造をとる前に神経を電気刺激することで、swappingが起こらない状況下での機能の評価が可能になることが示唆された。シナプス前終末からの開口放出の検出については、単一シナプス前終末からのグルタミン酸開口放出を検出する蛍光プローブであるiGluSnFRを初代培養神経細胞に発現させ、このシナプス前終末を電気刺激することで実現した。これまではシナプス前終末の機能はシナプス後細胞の反応として間接的にしか測定できなかったが、iGluSnFRを用いることで、標的とするシナプス前終末を直接調べられるようになった。シナプス前終末からの開口放出は活動電位の発生だけでなく高浸透圧溶液に浸すことによっても起こることが知られている。200mM Sucroseなどの高浸透圧液を培養神経細胞に還流することでシナプス前終末を高浸透圧刺激する系を確立した。この系はガラスピペットでの機械刺激のコントロールとして使用できる。超解像STED顕微鏡を用いたシナプス小胞の状態の観察に関しては、蛍光プローブに改良を加え、超解像STED顕微鏡に対応させた。超解像STED顕微鏡では超解像性を出すために非常に強いレーザーを標本に照射する必要があるが、このために蛍光の退色が問題となる。本改良では退色に強いプローブを作成した。これにより従来のコンフォーカル顕微鏡の約5倍の解像度で開口放出前のシナプス小胞の状態を検討できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

シナプス前終末へのガラスピペットでの機械刺激は、専用マニピュレータを導入することで、高時間分解能で可能となった。
シナプス前終末からのグルタミン酸開口放出を検出する蛍光プローブであるiGluSnFRの培養細胞への発現量の制御は、小さな培養皿を用いることによる大量培養系の確立により、短期間で至適条件を見つけることができた。
SNAP25がシナプス前終末でdomain swapping構造をとるか否かの検討には、当初はSNAP25のノックアウトマウスを用いる方針だった。しかし、ガラスピペットでの機械的刺激によってシナプス小胞を人為的に活性帯に結合させる方法が見つかったため、野生型のswapping probeを発現させたシナプス前終末を機械刺激することで、domain swappingが起こる様を時系列で観察することができるようになった。そのため、SNAP25ノックアウトマウスを使用する必要がなくなると考えられる。これにより、ノックアウトマウスの飼育維持に必要な時間を他の実験に割くことができるようになり、当初の計画以上に研究が進展している。
超解像STED顕微鏡用の蛍光プローブは、専門家との密な意見交換により、速やかに独自の着想を得て新規プローブを構想し、実行に移すことができた。

今後の研究の推進方策

ガラスピペット先端での機械刺激を利用して、SNAP25がswapping構造をとる前にシナプス前終末を電気刺激することで、swappingが起こらない状況下での開口放出機能を評価する。この方法が確立されれば、従来想定していたSNAP25ノックアウトマウスの使用は不要となる。このために、まずは機械刺激からswappingまでの時間経過を測定する。
さらに、機械刺激時の開口放出の時間経過をiGluSnFRを用いて検討する。先行論文により、高浸透圧刺激により開口放出が誘発されることがわかっているが、高浸透圧液の添加が必要であり、時間解像度が悪い。そこでガラスピペットを用いた機械刺激で代用し、時間解像よく開口放出の誘導までの時間を検討する。
超解像STED顕微鏡用の蛍光プローブは、今後実用に移し、機械刺激前後でのシナプス小胞の準備状態を高い空間解像で明らかにする。
神経細胞での実験が終了し次第、膵島β細胞やクロマフィン細胞などでも同様の実験を行い、神経細胞との違いを明らかにする。

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公開日: 2021-01-27  

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