前年度までに、シナプス前終末におけるSNAP25のdomain swapping構造は、シナプス前終末に対するガラスピペットでの機械刺激でも起こせることが示唆された。これは、機械刺激によってシナプス小胞と活性帯との結合が促進されるためと考えられる。本年度は機械刺激後にSNAP25がdomain swapping構造をとるまでの時間を計測する系を整備した。具体的には、電動マニピュレータを用いてシナプス前終末を時間解像よく機械刺激することに成功した。また、SwappingをモニターするためのFRET/FLIM蛍光プローブの蛍光寿命測定を、これまでの2光子顕微鏡から1光子顕微鏡に切り替え、高速化を可能にし、時間解像を大幅に向上させることができた。 超解像STED顕微鏡を用いたシナプス小胞の状態の観察に関しては、シナプス小胞に局在するタンパク質をこの顕微鏡に適する色素で標識して観察した。その結果、通常の光学顕微鏡では観察困難であった微細構造を観察することができた。超解像STED顕微鏡では生体標本を観察することができるため、この微細構造の時間経過の中での動態を解析することができた。 また、シナプス小胞の活性帯への結合を高解像度で確認するための超解像STED顕微鏡用のFRET蛍光プローブも作成した。観察の結果、シナプス小胞と活性帯の結合部位をこれまでの光学顕微鏡法よりも高い精度で同定できるようになった。この結合部位の時間変化も観察できた。しかし、超解像STED顕微鏡で用いられる高強度のレーザーによる退色が観測の妨げとなるため、今後は退色に耐性のある蛍光色素を選定するなどの改良を加える。
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