研究実績の概要 |
希薄分散マイクロバブル流体に生ずる乱流遷移シナリオの解読には,流れ場における気泡群形成条件の特定と,流れ場と気泡群との相互干渉の理解が鍵であることが分かった.マイクロバブルは周囲流体に比べて密度が小さいために渦構造に集積し,そこでの局所的な浮力が渦度の増強をもたらす.一方で流れ場に渦構造が存在しない場合でも,マイクロバブルは浮上の際に群を形成し,浮力の不均一により流れ場に循環流が発生する.そこで,気泡クラスター形成の条件,流れに対する気泡クラスターの応答・作用,それによる流れ場の変調,およびこれらのメカニズムを実験・理論.数値計算により解明する.研究実施計画と異なり,当該年度は管内流数値計算,管内流実験,および気泡浮力対流の非線形解析を行った.その理由については後述する. 直接数値計算(DNS)で得られた乱流パフの時空間3次元速度場を大阪大学の研究協力者より提供していただき,この速度場に対して球形気泡の並進運動方程式を数値的に解いた.マイクロバブルの初期位置は一様乱数により生成し,その個数は30,000個とした.DNS速度場の時間スケールは無次元時間で1,000であり,乱流パフの渦生成周期と同程度とした.現在,パフ内部の速度勾配テンソル第2不変量(Q値)とマイクロバブル数密度分布の関係を明らかにしている.一方で既存の管内流装置を利用してパフ内部のマイクロバブル立体分布を撮影した.気泡はパフ内部で複数の群を形成し,群と群の間の距離が,乱流パフの縦渦間隔と同程度であることが分かった.一方で,線形安定性理論で得られた気泡浮力対流を初期推定解として,Newton-Raphson法とpath following法を用いることで,非線形分岐解を算出した.特に,抗力係数のモデルにより解の分岐が亜臨界または超臨界になること,揚力が流れの安定・不安定に寄与することが分かった.
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